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FORUM No.06(2007.3.19)

松村秀一
「200年住宅」と住宅産業の未来

LECTURE03

良質な住宅を有効に利用するために

松村──では今後住宅の寿命は短いのか。明らかにこれまでのような早期の、例えば築30、40年で建て替えることは減少します。政府が頑張らなくても今後は住宅の寿命は自然に伸びるので建て替えなくなる。だからこれからは住宅の寿命は技術的なテーマにはなりません。むしろ住宅の寿命は放っておいても伸びます。ストックの3/4が昭和50年以降に建設された住宅なのですが、例えば延べ床面積は、fig.5に新しくその年に建てた建物の延べ床面積の平均値がありますが、1980年から2005年までほぼ横ばいです。1980年まではものすごく増えていました。
fig.5 [拡大]


高度経済成長期に建てた住宅は床面積が小さかったから狭いのですけれども、1980年以降に建った住宅は今よりも床面積は広いから、狭いことを理由に壊すことはありません。そのほかの住宅の質、例えば断熱性能などは多少は進歩していますが、変化はごく緩慢で壊さなくてはいけないほど質が変わっていることはない。そうなると住宅を建て替える理由はない。そうなると建て替えるもうひとつの理由は住宅の高齢化です。よくメンテをした建物は長く持つと何の根拠もないことを言っている先生方がいるものですから、そんなはずはないだろうと思い、本郷の大学の近所に戦災を免れたエリアを調べました。このあたりには築後70年以上経っている木造住宅が結構建っています。それが何故建っているのかをしらみつぶしに調べました。その結果、それらの木造住宅が長くもっている理由は、例えば柱が太かったとか家族の人たちの手入れがいき届いていたといったことでは全くないことがわかりました。むしろそういう家は建て替えられています。70年以上経って残っている木造住宅はかなりの比率でお年寄りの一人暮らしです。そこで「何故建て替えなかったの」と訊くと、「ちょっと乗り遅れた」ということで周りの家が建て替えているときに躊躇していて今に至った。つまり建て替えブームに乗れずに結果的に長く住んでいるわけです。「何か手入れをされたのですか」と訊いても「いや全然していません」と言われる。柱も別に太くないし、そういう家が平気で70年建っているわけです。さらに「建て替えますか」と訊くと、「私が死ぬまでは建て替えないでしょう」と言われるので、あと20年ぐらいは十分に生きていらっしゃるでしょうから、住宅は90年もつことになるわけです。ですから、残っている理由はハードの面とはあまり関係ないことが歴然としたのです。あるいはメンテを一生懸命したからもったというのは、勉強したから賢くなるといっているようなもので、根拠ははっきりしません。少なくとも僕らの行なった調査ではそんな事実はない。賢いかどうかは勉強の量では決まらない。住宅も同じで、一生懸命雑巾で拭いたら長持ちするというのは一種の迷信かもしれません。
自民党の方々に申し上げたかったのはここからで、十分な量の長くもつ住宅は国富であり、それをいかに将来の世代のライフスタイルに相応しい生活の場として効果的に運営していけるかがテーマだということです。長くもつものを、時代が変わったときにどのように運営するかが政策的にも産業的にも課題になると思います。市場で見ると、fig.6はイタリア、イギリス、フランス、ドイツ、日本における、住宅投資全体の占める新築以外のもの(増改築)の割合です。イタリアでは、国全土で住宅に対する投資が100円あったとするとそのうちの60.7円は増改築に投資されている。つまり新築には39.3円しか使っていません。イタリアだけでなくイギリスも同じくらいで、フランス・ドイツ、さらに最近新築市場が活況を呈しているアメリカでも40パーセントぐらいだと思います。先進国と言われている国でこの数字が50パーセント前後で落ち着いているのは一般的なことです。それに対し日本は18パーセントぐらいだと言われています。

fig.6 [拡大]


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