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FORUM No.03(2006.10.12)

吉池基泰
住生活エージェント型ビジネスの役割と展開

LECTURE01

住生活エージェントガイドライン

吉池──住生活エージェントと消費者エージェントという二つの言葉がありますが、基本的に同じ意味で使っています。ただし、住まい選択という観点で、住生活エージェントと呼ぶようになりました。
消費者エージェントというのは、消費者が住まいを選択する過程で、「消費者の立場に立って情報提供、アドバイス、事業者の選定、などのサービスを提供するプレイヤー」ということです[fig.1─3]。こういう人たちが必要になった理由として、家に関する情報が増えすぎて誰から情報を得て、誰に家づくりを頼めばよいのかわからなくなり、難しくなってきていることがあります。

また、自分がどのような住宅を建てたいかについて上手に説明、表現が出来ない消費者の方が結構いらっしゃいます。だから逆に消費者の潜在的な要求を引き出して、「このようなサービスができます」とアドバイスができる人が必要なわけです。プロから提供される商品、サービス、価格が本当に自分にとって納得できるものか判断ができないのです。家づくりには何千万円ものお金が掛かりますので、経験の浅い消費者はプロの手助けが必要になってくるのです。つまり第三者が供給者と消費者の間に入って、消費者の立場で代理人として家づくりを手伝う、といったエージェントに対するニーズが高まってきているということです。
従来は無料でこのようなことをサービスとしてやってきたのですが、最近はますます複雑になってきているので、フィーを得て商売にする人たちが出てきました。設計事務所はこれに類する機能を果たしてきたのですが、自分の設計にこだわるところもあり、難しい一面もありました。しかしエージェントの中には世の中にある多数の設計事務所の中からその消費者に一番あった、一番よいところを選んでくるサービスを提供しているところもあります。

fig.1[拡大]
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ウィークエンドホームズという会社があります。2000年に創業して歴史はまだ浅く、社長は森本剛民さんという方です。ここは建築士が200人ぐらい登録している、ネットコンペを主催している会社です。消費者が「こういう家を建てたい」とウィークエンドホームズに持ち込むと、消費者のニーズを聞いたり、現場を見学に行って条件を見たりして、それらをネットに流します。そして、ネット情報を見た建築士がコンペに応募します。多い時は数十人ぐらいの建築士がコンペに応じます。消費者は数十万のフィーを支払い、数十プランの住宅プランを得ることができる、というサービスを提供しています。これがひとつの住生活エージェントの事例です。コンペに勝ち抜いた設計事務所は施主と設計契約を行なって別に設計フィーを得ます。
もうひとつの住生活エージェントの代表例としてさくら事務所というのがあります。さくら事務所は個人向けの不動産コンサルティングを行なって、事業として成功した例です。代表的なサービスはマンションの内覧会の立ち会いで、6万円からです。内覧会は、マンションを引き渡す一カ月ぐらい前に、問題がないか、工事会社立ち会いのもと消費者にチェックしてもらう会で、そこにさくら事務所が第三者として立ち会ってくれます。そうすると、消費者だと壁紙が剥がれているとか、傷があることぐらいしか言えないですけれど、彼らは非破壊検査をして問題がある場合にはディベロッパーにその情報を提供します。つまり消費者ではとてもチェックできない専門的な調査をやります。それから中古住宅で一戸建て丸ごとの品質チェックで何十万円という場合もあります。
またもうひとつの事例として、住宅プロデュース・ビジネスというのがあります。第三者として設計事務所を選ぶ、工務店を選ぶ、施工プロセスを監督する、といった機能を提供することで会社によっては200万円ぐらいのフィーをとるというビジネスモデルを実施している会社もあります。これもエージェントビジネスです。
いま挙げてきた事例を総括すると、助言や診断をしたり、場合によっては価格の交渉代理や事業者を評価してよい事業者を紹介したり、あるいはトータルにコンサルティングする人たちがエージェントの分類になります。住宅ローンのファイナンシャルプランニングやコンストラクション・マネージメントもこの分類に入ると思います。
彼らが提供してくれる価値についてですが、ひとつはプロの第三者が入ってくることで消費者の不安が減るということです。それから消費者の取引リスクも減ります。欠陥住宅をつかまされるようなリスクも減ります。それから消費者では判断が難しい、価格の妥当性をプロの目で見てくれます。さらに、消費者にとってよりよい設計を提供してくれるところもあります。また、マンションの住民の合意形成を支えるビジネスも存在しています。つまり個人に対してだけでなく、集団に対するエージェントもいます。

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