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FORUM No.03(2006.10.12)

吉池基泰
住生活エージェント型ビジネスの役割と展開

SESSION03

建築家の職能の再構築

山本──無能な建築家にあたるとたいへんな目にあうからエージェントが必要だというお話がありましたけれど、まったく無能な建築家というのもなかなかいない(笑)。何かしらは得意で、例えば図面書くのが得意だけれどコミュニケーションが下手という人もいれば、逆にコミュニケーションはうまいけれど図面は下手という人もいる。だから、例えばこういう新しい機能ができたのなら、あなたは建築家ではなくてエージェントになりなさいと切り分けられるかもしれない。日本はおそらく世界一建築家、一級建築士の多い国です。そこでダブついている建築家たちが、自分にあったいろいろな職業を見つけられる可能性が広がるかもしれない。住生活エージェントもザウス的なもの、ウィークエンドホーム的なもの、さくら事務所など実はいろいろな種類があり、全然違う仕事です。多くの建築家が、そのどこかに関しては適性を持っている可能性があると思います。そう考えると、建築家たちの職能を切り分ける=アンバンドルする、そして再構築=リバンドルしていくことが考えられます。建築家に集約されていた職能を再構築するわけです。再構築のときに建築家という職能だけではなくて工務店を含めると、この建築業界に携わるものすごい人数がより合理的に再配置されるのではないか。そういう可能性を感じて、このフォーラムでは珍しくちょっと明るい気持ちになりました(笑)。

山本想太郎山本想太郎氏

吉池──そうだと思います。おっしゃるように、建築士によって適正業務が異なると思いますので、設計が得意なところがきちんと図面を提供し、そうでないところは検査の仕事をし、場合によってはコミュニケーションを中心に行なうというように分業していけば、それぞれがベストな状態で機能していけると思います。新築市場だけでなくストック住宅流通市場においても同様のことが言えます。中古住宅を円滑に流通させるためには、建物を検査する、金額を査定する、建物を再生・メンテナンスする、不動産を流通させる、売買の部分でマッチングさせる、保証する、といったさまざまな機能が必要です。これらはまったく別の機能で、こういう機能を果たす職能を持つプレイヤーが市場で成長していく必要があります。各機能を担う人たちを育成していくことが、これから建築だけでなく不動産の流通の世界でも必要で、設計事務所の人たちにも各機能の担い手になっていただくことを期待したいですね。

松井──このエージェントのサービスを使っているユーザーはどのような人たちですか?

吉池──現状ではこだわりのの強い方が多いと聞きます。エージェントと付き合うのはそれなりに時間・労力がいるので一般の人にとっては面倒なのです。注文住宅等の場合、普通に建てるだけでもそれなりの労力が掛かるのに、第三者が入るともっと時間・手間が掛かるでしょう。だから家づくりにこだわりがあって、ある程度時間のある人でないと上手に活用できないでしょう。しかしエージェントの認知度が高まれば、その価値を理解する人が増え、もっと利用層は広がってくると思います。

松井──この面倒くささを排除するのが裾野を広げる大きなポイントだということでしょうか。

吉池──一つの課題だと思います。最近、一部の会社ではIT投資をしていて、コミュニケーションを必要な部分だけ対面でやり、必要ではない部分はネットで対話を出来る様にしています。ネットで全ての対話記録が見られるので、関係者全員が今どういう議論がなされているのかをリアルタイムで把握できます。それによって、対面でのコミュニケーション時間の削減が可能になっています。それが本当に面倒くささを少なくすることに繋がっているかどうかは分かりませんが、時間の節約にはなるでしょう。

山本──根本的に面倒くささの排除が可能なのでしょうか。家を建てるのは、基本的に面倒くさくて当たり前です。これだけ多くのことを決めて、しかもすべてが気に入るようでなければいけない。そうではないと不満が残るわけです。面倒くさくなく満足度の高い状態にいたることは可能なのでしょうか。

松井──よいものをつくるには、面倒くささを乗り越えなければだめだということですか。

山本──その面倒くさいことが楽しいんだというようにしてほしい。これだけ楽しませてくれてありがとうぐらいの気持ちです(笑)。

吉池──ハウスメーカーがやっていることはある意味、面倒くさくなく住宅を売ることではないでしょうか。消費者の側から言えば、パッケージ化された商品の中から少ない労力で判断するということです。もちろんオプションには対応してくれますが、基本はハウスメーカーの決めている商品の中から選択するわけです。本当にどこまで消費者のニーズに応えているかという意見があるかもしれませんが、大手のハウスメーカーは建材設備メーカーの商品の中でもよい物をピックアップしています。ある意味、住宅産業の中で普通に提供できる商品としてはかなり上質の仕様を提供していると思います。消費者からすると、自分の気持ちに応えてくれる一番よい商品が並んでいるという気持ちにハウスメーカーの営業マンの人はさせてくれ、満足度は高い。当社独自の調査では、例えば、へーベルハウスの満足度はとても高いのですが、その理由は、自分はこんな暮らしがしたい、家族がこんな問題を抱えているから解決して欲しいという消費者のニーズを限られた仕様とはいえ、自社の住宅仕様でどう解決するかをきちんと説明し、消費者が納得しているということでしょう。

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