プロローグセッション
●ボストンのコンバージョン
次はボストンの例ですが、ここにはハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)という2つの有名な大学があり、港町なのでたくさん倉庫街があります。7〜8年前に取材に行ったのですが、倉庫が住宅にコンバートされていました[fig.3-01]。チャールズタウン・ネイビーアールという名前の住宅の近くにはヨットハーバーがありまして、反対側のチャールズ川の河口あたりにはハーバードとMITがありますから、周囲の環境から見れば、ウォーターフロントの一等地にあるわけです[fig.3-02]。ですからここは高級住宅地ということになるのですが、実はこれはアフォーダブル(手頃)な住宅です。このようにウォーターフロントに倉庫が並んでいますが、これらが住宅にコンバートされました[fig.3-03]
fig.3-01―02

fig.3-03

1970年代に閉鎖された倉庫は、1989年にコンバートされて、7階建て、2ベッドルームの50戸の住宅ができました[fig.3-04]。アメリカでは、日本のように何LDKという言い方はせずに、1ベッドルームとか2ベッドルームという言い方をしますが、2ベッドルームで10万ドル、つまり1000万円です。ダウンタウンがすぐそばの一等地でそんなに安く買えます。2ベッドルームだと70〜80平方メートルくらいあるでしょうし、眺望良好、ヨットハーバーは目の前、向こう岸にハーバード大学も見えるという、不動産広告的にはよい材料ばかりです。細かいことをいうといろいろあるのですが、これはボストン市の再開発局から補助金が出ているため1000万円にでき、やはり安いから売れているということです。こういう条件ですと、すぐ埋まるでしょう。先ほどのニューオーリンズのものだと価格はもっと高いのでしょうが、東京の港区では、このくらいの値段でこんな建物はできません。おそらく1000万ではなくて1億くらいの値段がついてしまうと思います。
fig.3-04

●老人ホームになったピッツバーグ駅
次はペンシルバニア州ピッツバーグの駅です。アメリカの場合、鉄道より飛行機と車の社会なので、鉄道駅は賑わっていないのですが、戦後10年から15年くらいものすごく栄えた鉄の街ピッツバーグの中心だったところです。ピッツバーグ駅は、たまたま通っただけなので、内部の取材はできなかったのですが、昔の駅のホームと駅舎は今、老人ホームになっています。東京駅がコンバートされて老人ホームになっているようなもので、非常にびっくりしました。ぱっと見つけて立ち寄っただけで、セキュリティの関係もあってなかには入れなかったのですが、非常に興味深かったので写真だけ撮ってきました。ですから、いくらで入れるのかといった細かな取材はできていませんが、要はこういう例があるということです。ピッツバーグの街の川を挟んで対岸には、フィリップ・ジョンソンが設計したガラスのオフィスビルがあり、こちら側には別の鉄道駅があるというようなシチュエーションですが、ここももう使われなくなった駅を文化商業施設にコンバートしています。鉄骨構造の駅舎のホームだったところがこんなふうに商業施設に変わっています[fig.3-05]
fig.3-05
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