プロローグセッション
●アメリカの木造住宅
次はコンバージョンの例ではないのですが、アメリカの住宅はいかに性能が高いかという話です。
この家は私が69年に最初にアメリカに留学したときの友人の家です[fig.4-01]。場所はコロラド州のデンバーで、説明を聞いてびっくりしたのですが、これは築100年の木造住宅です。ここに元々住んでいたのはロシアからの移民で、この土地のジャガイモ農場の労働者のために建てられた住宅だそうです。いってみれば、100年前の当時最下層の人が住む住宅が立派な構造体として今も使われている。アメリカでは、そういう最下層の労働者に対してもこれだけ立派な住宅をつくって与えていたわけです。今使われている家で子供もいますから、多少ごちゃごちゃしていますが、本当にしっかりした立派な家で、そこに増築をして住んでいます[fig.4-02]。日本だと年数が経った家は安くなりますが、アメリカでは逆で、これは結構高い。
fig.4-01-02

●トルコの例――刑務所のコンバージョン
次の例はトルコのイスタンブールです[fig.4-03]
こちら側がヨーロッパで向こう側がアジアです。一番有名な繁華街の中心には、ショッピングセンターやレストランがあります。ただ、見ていただくとわかると思いますが、鉄格子がたくさんあります。この建物は以前刑務所だったということで、刑務所をコンバージョンしてレストランにした例です[fig.4-04]
fig.4-03―04

これは次の年にトルコに行ったときのものですが、ホテル・ケルバンサライと書いてあります[fig.4-05]。ここはエドゥルメというイスタンブールからバスで3〜4時間くらいの町のそばで、ギリシアとブルガリア国境から10キロくらいにあり、軍隊がうろちょろいるムーンバートルという街です。
ここにエドゥルメの大学の建築学科の先生に案内してもらって行ったのですが、古い街で、ここは昔一度トルコの首都が置かれたこともあります。木造保存地区を見学させていただきましたが、そこも元刑務所で、比較的に高級ホテルにコンバートしたものでした[fig.4-06]。もともと刑務所でしたから、内部は頑丈なつくりになっています。つくりから見ると、刑務所だといわれれば何となく納得できるような感じです。
fig.4-05-06

もうひとつ、同じような類のコンバージョンにイスタンブールのフォーシーズンズ・ホテルという超高級ホテルがありまして、これも元刑務所だった建物です[fig.4-07]。ここは中庭があって、有名なモスクもあります[fig.4-08]。当時はコンバージョンを勉強していませんでしたので、こんなところがあるのか、いい勉強になったなという程度でしたが、今思うと、コンバージョンの観点からもっと突っ込んでいろいろ取材をしたかったと思います。
fig.4-07-08
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