INAXe`Ze¨O´e´YaΔE´tE´HA°[E´a^E´A¨ INAXE´tE´HA°[E´a^E´A¨E´VE´a¨A°[E´Y
FORUM No.05(2007.1.25)

角田誠
住宅産業における3Rの取り組み

LECTURE05

プレハブ住宅解体工事例

角田──プレハブ住宅をどのように壊しているかを調べているのですが、30年、40年前に建てられたプレハブ住宅がそろそろ壊される時期にあります。現場でゴミがどのように出ているのか、木造住宅との違いを明らかにしたいと考えていました。解体実験などは住宅メーカーで既にやっていますが、公にデータを出してくれないので、自らやって出してみました。住宅メーカーが自分の会社で、工事をどのように考えているのか聞いてみましたが、さまざまな取り組みをしています。しかし、プレハブ住宅の場合はリピーター率がきわめて低いため、自分でつくった住宅を自分たちで壊すという経験がほとんどありません。今までA社のプレハブ住宅に住んでいた人たちは、建て替えるときにはB社でつくる。そうするとB社はA社の住宅を壊すという経験はしますが、A社は自分たちが建てた住宅を壊すという経験は少ない。調査は1年ぐらい前から行ないましたが、AtoAという場合を探すのに時間がかかりました。壊し手である解体工事業者の人たちに、木造住宅と比べて聞いてみたところ、プレハブ住宅を壊した経験は圧倒的に少ないのですが、増加している傾向はあるという印象は持っているようです。壊すときに、そのものがどのようにつくられ、何が使われているのかに関する情報があるなしで、壊し方がまったく違ってくるわけですが、普通の在来木造だと、お施主さんが図面をなくしてしまってよくわからないことがあります。しかしプレハブメーカーだとある程度図面が残っていて、情報が管理されているので、壊すときにそれを参考にできます。壊す側からするとこの情報は非常にありがたい。しかし構造的に硬かったり、丁寧に分別しても処理コストが高くなったり、躯体と木部の造作の分離作業に手間がかかるなどの問題があります。それから出てくるゴミに複合材が多かったり、メーカー独自の材が多い。それらが何でできているのかわからないので、取り外しても、どの処理場に持っていったらよいか判断できずに、最終的には捨ててしまうこともあるようです。
実際に木造住宅の場合と比べて調べました。プレハブの方はいろいろなものが複合化されて、接着度も高い等々の理由で、壊すときにたくさんの人間が必要になると思ったのですが、調べてみると必ずしもそうとは言い切れません。作業内容別では、整理・運搬・梱包の割合が木造よりも少し少なく、逆に清掃・準備の部分が木造に比べると多くなっています。木造住宅の解体実験は3、4年前に行なった実験ですが、この数年間で、現場で解体する環境が厳しくなっています。例えばアスベストの問題です。これまでは何もせずに壊していたのですが、今はしっかりとシートで覆ったうえで解体しなければならない。何を使っていたか、どういうつくり方をしていたかも作業人数に影響するのですが、その時代によって影響してくることが違ってきます。こういうことも解体には大きく影響してくる部分です。
次に内部と外部でどのように工事が行なわれ、どれぐらいの人数が関わってきたかを示した図です[fig.5-01]
fig.5-01[拡大]


P2の内壁では、下地に石膏ボードを2枚貼って、その上に木質繊維版を貼って、さらにはクロスを貼っており、仕上げまで入れると4層構造です。これを全部一層一層剥がしています。これに相当の時間を費やしています。同じようにP1は糊でくっついている複合化されたもので、剥がすのに相当時間がかかります。外部で特徴的なのは屋根材です。プレハブ住宅ではこの部分が多くなっています。W1、W2の木造住宅のときは、屋根の仕上げ材は瓦で、P1、P2ではアスベスト建材の石綿スレートです。これは先ほどお話したように丁寧に取り外さないといけないので、時間がかかります。
解体状況の写真をいくつかお見せします。この住宅は築20、30年なのですが、建設当時は900幅、1000幅の外壁のパネルを乾式のジョイントでつなげていたので、それを剥がせばパネルがペロっと剥がれます。そしてパネルが、工場で複合化された材料でつくるのと逆の方向できれいに分別され、下地材、枠、断熱材などが順に分けられていきます[fig.5-02─04]

左上から時計回りにfig.5-02─04

屋根はアスベスト問題が出る前までは、きれいな形で取りはずしていませんでした。割れたときの飛散物が身体によくないことがわかり、きれいに一枚一枚剥がすようになりました[fig.5-05]。屋根に打ちつけている釘を1本1本剥がしていきます。防水紙が南側にあると、長期間の日射熱によって溶け出してスレートの屋根材にくっついて処理するのが難しくなります。それらに注意しながら、屋根の下地材を取り外していき、鉄骨の躯体が現われてきます。これらをそれぞれ金属・木・その他という形で運び出します。
解体材の搬出状況ですが、木はトラックの積載量に対して上手く積めるのですが、鉄骨フレームのような躯体材料はカサが出てしまう。新築の段階では1枚のフレームとして運び込まれるのですが、きれいにボルトを取るような解体ではなく重機で引っ張って壊すので、グニャグニャ曲がってしまう。ほとんど空気を運んでいるようなもので、これは大きな問題です[fig.5-06]

fig.5-05、06


プレハブ住宅の解体調査で気がついたのですが、最近壊す人たちと出たゴミを処理する人たちが同じであることが増えています。壊すときに手間をかけずに壊しても自社の再資源化工場で再資源化できるとなると、あまり丁寧には壊しません。処理技術が高くないと、うちの工場だと丁寧に壊さないと再資源化できないから丁寧に壊そう、となってくる。解体して出たゴミを自社以外の処理業者に持っていく場合では、再資源化工場は荒く壊したものは引き取るお金が高くなり、丁寧に解体すると安い値段で引き取ってくれます。解体工事の請負金額に対して、処理費を高くして、自分たちの労働を少なくするのか、あるいは丁寧に壊して処理費を安くするのか、解体する側がどちらで考えるのか。そのあたりはトータルのバランスになってくると思います
最後に、中間処理施設における混合廃棄物の処理の写真をお見せします。いろいろな廃棄物がコンベアーで流れてきて、それを金属、木、コンクリートなどに丁寧に分けていきます[fig.5-07]。最終的には人間が手でやっています。これを見た瞬間、人間がしたことは最後は人間が処理しなくてはならないことを実感しました。

fig.5-07


3Rはどれをやればよいということではなく、すべて関連しています。個別の取り組みや技術開発も何のためにやっているのかだと思います。リサイクルが目的化されている、と言いわれますが、リサイクルは資源を有効に使うためのひとつの手法でしかないのに、何でもリサイクルすればよいとリサイクルが目的化され、たくさんのエネルギーが投入される。そのようなことをするなら、深い穴を掘って埋めてしまったほうがよいかもしれません。数年前イギリスに行ったときに案内してくれた女性が、たぶん冗談だとは思いますが、イギリスには炭鉱を掘ったたくさんの穴があるからそこに埋めれば200年後にはまた石炭になる、と言っていました。トータルで考えたときにどのように対処していくのか。ものをつくるときに、これからつくるものに対して、どれだけ先を見てつくっているのかを見誤ってはいけない。私は単純に長くもつものをつくったほうがよいとは考えていません。適材適所のサイクルでつくること、それでいて無理がないつくり方が重要だと思います。これからものをつくることに関しては、こういった視点が必要になってくると思っています。

PREVIOUS | NEXT