LECTURE01
建築の新陳代謝と3R
角田誠──今日は住宅産業における3つのRのエッセンスについて話をします。これは、国内にどれだけの処分場があって、今後どのぐらいのゴミを捨てることができるか、をまとめたデータですが[fig.1-01]、
2003年ベースでは、あと6年ぐらいで処分場がいっぱいになってゴミが捨てられないとなっています。本当に6年でゴミが処分できなくなるかというと決してそうではありません。少しずつですが新しい処分場もできていますし、それから企業や住民の努力によってゴミの量が減ってきています。
残余容量を表わすグラフのカーブがゆるくなってきていることは、処分場にはまだまだ余裕があるとみることもできます。資源を無駄に使わないことはこれからの地球を考えると重要なのですが、日本は国土が狭いためもう捨てる場所がない、それ故さまざまな取り組みをしなければなりません。これからお話しする3Rというのはそういうことです。
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角田誠氏
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建築にはさまざまな資源を使ってつくり、それが最終的にはいらなくなり、壊されていく、という段階があります。それぞれの段階での地球環境への負荷には、例えば資源採取の段階では、あまり資源を採取してしまうと天然資源がなくなる、生態系が破壊される、あるいは製造するときにもすべての資源が有効に使われるのではなく、製造段階でもゴミが出てきてしまう、といったことがあります。製造された製品・部品を、建築はアセンブルしてつくるわけですから、ここでもさまざまな資源が排出されます。また建築としてでき上がってからでも排出されるものがあります。つまり建築を使うにはエネルギーが必要で、それによって化石資源を枯渇させ、さらには二酸化炭素を大量に排出してしまう。さらに壊すときにはゴミが出て、それを処理してまた地球に戻しますが、最近は地球から出ていく量と戻ってくる量のバランスが崩れてきています。この大きな建築の生涯を循環系と考えた場合に、資源の多くを有効に使おうとするならば循環系のループをできるだけ長くする必要があります。つまり、ものが流れる速度を遅くすることが重要になってきます。ものを長く使うことによって長寿命化させるわけです。もうひとつは、単にループの流れの速度を遅くするだけではなくて、流れている量をいかに少なくするかで、資源を節約することです。さらに出口側で言えば、ゴミの発生を少なくすることです。そして、この循環系の中で資源を地球から取り出して地球に返す場合でも、すぐに地球に返すのではなくて、もう一回その循環系の中で有効利用をしていくことがリユース、リサイクルになるわけです。最後に循環系の質を高めることですが、このことはあまり日本では注目されていません。材料を汚れたままで地球に返すと、次に使うときに資源が汚れていることになります。最近では土壌汚染の問題がさまざま言われていますが、有害物質をいかに排除し、循環系をきれいにしていくかが重要になってくると思います。こういった資源の循環で、ピンク色の部分を「動脈」、青色の部分を「静脈」と呼び[fig.1-02]、リサイクルなどを行なっている産業を「静脈産業」と言います
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