レクチャーセッション
スケルトン・インフィル(SI)
近角真一――今日は、最初にNEXT21(環境との共生を目指す近未来の都市型住宅として建てられた大阪ガスの実験集合住宅)を中心にしたSIの話、後半は本郷で進行中の求道学舎(大正時代に建てられた寄宿舎)のリノベーションの二つの話をさせていただきたいと思います。
ここ6、7年「スケルトン・インフィル」という言葉が随分いろいろなところで聞かれるようになりましたが、私が関わったプロジェクトでは、14年前に、東京大学の内田祥哉先生と京都大学の巽和夫先生のジョイントによる「NEXT21」というプロジェクトがありまして、そこに実務家として参加しました。その時に巽先生のグループが「スケルトン・インフィル」という概念でそのプロジェクトを位置づけ、内田先生のほうは「システムズ・ビルディング」という概念でそれを位置づけました。1990年にスタートして、できたのが1993年ですから、その間ヨーロッパを見てまわったりして、かなりいろいろな議論をしてコンセプトを打ち出したわけです。当時はまだSIとは言っていなくて、最初にスケルトン・インフィルの理論を提唱したオランダの建築家ハブラーケンの言葉で「サポート・インフィル」という概念が提示されていました。そのサポート・インフィル、あるいはスケルトン・インフィルというかたちでこのプロジェクトに取り組んだわけです[fig.1-01]。その時に「古臭い理論を基に実験住宅をつくって、本当に21世紀の住宅像を語れるのか」というような悪口をかなり言われた記憶があります。1990年時点では、サポート・インフィルは1960年代のマスハウジング批判のために生まれたものであって、世の中は今そういう状態ではないからハブラーケンの理論はもう古い、もはやSIではないという議論がありました。ところがその数年後、阪神・淡路大震災があり、マンション総プロがあり、都市公団でもKSI(公団型スケルトン・インフィル:構造躯体部分や共用設備と、住宅専有部分の内装や設備とを分離することで、住宅の可変性・更新性をより発揮できるシステム)研究が始まることになり、それらを契機に民間企業の間でもSIという言葉が行き交うようになってきたんです。最初はSIというと、少し実験的な、工業化主体のものだと思われていたのですが、研究の終盤ではマンション総プロのパンフレットに見られるように、ヨーロッパの諸都市に見られるスケルトンがスケルトンの標準的なイメージとして定着するようになったわけです。

fig.1-01

fig.1-02
各企業が出しているSIに関するパンフレットをここに並べてあります[fig.1-02]。1996年に次世代街区構想という経済産業省のプロジェクトで、三宅理一先生がサポート・インフィルという概念を取りあげていますが、この時からSIという省略形が始まっています。それがKSI研究につながり、マンション総プロのパンフレットにも出てくるようになったわけです。マンション総プロは5年間続きましたが、最後の報告書ではSIという言葉を使っています。「SI住宅」をインターネットで検索した時の件数も、そのあたりからかなり多くなってきました[fig.1-03]

fig.1-03

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