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運営団体と活動 |
Organization+Activity |
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空堀商店街で長屋のリノベーションを主導しているのは、「空堀商店街界隈長屋再生プロジェクト(からほり倶楽部)」という有志団体である。2001年4月に設立されたこの団体は空堀のまちに対して以下のような趣旨で活動している。
・美しく歴史のあるまちの保存、再生
・イキイキした活力あるまちづくり
・新旧世代、文化の共生
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からほり絵図 |
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2005年6月には、7人の理事を置き、組織化された。代表理事を務める建築家の六波羅雅一氏は10年以上前から空堀商店街に仕事場兼住まいを構えており、町の魅力を感じてきたひとりである。からほり倶楽部には、活動の目的に賛同した建築家、地域の会社、地元住民、商店街関係者、再生した長屋への出展者など、100名以上の会員がおり、活動も多岐に渡っている。
活動内容としては、空堀商店街界隈の長屋を残すための長屋物件の紹介事業である、「長屋すとっくばんくねっとわーく」や、空堀商店街全域を使ったイベントである「からほりまちアート」の開催、地域内のお店や見所を紹介した「からほり絵図」や情報誌の発行、地域イベントへの協力等がある。また、からほり倶楽部自身が事業主体となって、長屋再生複合ショップである「萌(ほう)」、「練(れん)」、「惣(そう)」をサブリースというかたちで運営している。 |
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「長屋ストックバンクネットワーク」では、長屋を紹介するだけでなく、防災や防犯、耐震性の観点からリノベーションを促したり、元々の長屋の住民と新しく移り住む人達との橋渡しの役割を担うことで、人間関係の円滑化を図るという目的を持っている。
「からほりまちアート」は、2001年から開催されているイベントで、地域内外の人々がまちの潜在的な力を再認識し、まちが活性化する事を目標としている。空堀商店街に残る長屋や路地、路地内の石段などのまちのさまざまなスペースに、公募によるアーティストの作品を展示するもので、アートを楽しむと同時に町並みの散策も楽しめるようになっている。毎年秋に土日の2日間開催し、約1万人の来場者がある。このイベントが、商店街に新しい人を呼び込むきっかけになったり、住民の町並みや路地に対する意識を高めるといった、ボトムアップのまちづくりを進めるうえで効果的な役割を担っているのではないだろうか。 |
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長屋再生複合ショップ「惣〜so〜」外観 |
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長屋再生複合ショップ「惣〜so〜」は、初めてからほり倶楽部が事業主体となって長屋を再生し、2002年7月に複合ショップとしてオープンした事例である。元々は二軒長屋であったこの建物は、築90年を超しており、雨漏りや傾きがひどい状態で、解体して駐車場にしようというところだった。それを聞いたからほり倶楽部が、一旦長屋を借り切り、補強や雨漏り、共用部の修理をしたうえで占有部を小さく区切ってテナントを誘致し、長屋を活用しようという企画を提案した結果、受け入れられ、現在はカフェや雑貨屋、美容室など5店舗が入居している。提案の段階で、オーナーには駐車場より少し多い収入を安定して受けられる代わりに、駐車場にする場合と同じ初期費用を負担してもらい、転貸する事や大幅な改装をする事、現状回復しない事を了承してもらったうえでの契約となっている。現在、惣の運営はテナントの自治会である「惣会」で行なわれている。 |
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御屋敷再生複合ショップ「練〜len〜」は元々ある宮家の別荘として神戸の舞子に建てられた御屋敷が、大正末期に現在の場所に移築されたものである。2001年にはマンション建設の計画が出て取り壊しの危機にあったが、この建物に愛着を持っていたオーナーが、からほり倶楽部が提案した保存再生案に賛同し、現在の複合ショップに再生されて2003年2月にオープンした。「惣」と同様にサブリースになっており、現在「練」には14の店舗が入居している。六波羅雅一氏の主催する設計事務所である、六波羅真建築研究室もここに入居しており、「練」の管理も行なっている。「からほりまちアート」の際には拠点としても活用されている。 |
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左・中:御屋敷再生複合ショップ「練〜len〜」の外観
右:同、内部 |
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複合文化施設「萌〜ho〜」はからほり倶楽部の手掛ける3軒目のサブリース事業であり、空堀のまちに残る歴史や文化を受け継ぎ、地域住民を初め多くの人々がそれらを共有できる空堀文化の拠点となる文化施設として長屋を再生した事例である。パン屋や雑貨屋といったテナントのほかに、地元出身の作家であり、直木賞にもその名を残す直木三十五の作品や写真、資料を展示した直木三十五記念館が運営されている。 |
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左:複合文化施設「萌〜ho〜」の外観
右:同、内観 |
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運営団体と活動 |
Organization+Activity |
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1997年にオープンしたギャラリー「楽の虫」が中崎町では初めての長屋のリノベーションの事例である。オーナーの宮久保忠弘氏は、1995年の阪神・淡路大震災で被災して、半年程中崎町の長屋に仮住まいしていた事がきっかけで、このまちの魅力を知り、倉庫だった路地裏の長屋を改修して1997年にギャラリーを開いた。4年後にはすぐ近くに、アートと手作り雑貨の店である2号店「RAKUNOMUSI」もオープンした。楽の虫で個展を開いた事がきっかけで、近所の長屋に引っ越してきた作家もいる。
その後2000年秋頃から個性豊かな店が徐々に増えていき、2005年10月の時点では、この地域の中には長屋をリノベーションした店舗が30店程あったが、店を運営しているのは20-30代の若い人がほとんどで、女性が多い事も特徴のひとつである。 |
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上:ギャラリー「楽の虫」外
下:アートと手作り雑貨の店「RAKUNOMUSI」外観 |
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「R cafe」は近畿大学と大阪市立大学の学生3人が、卒業設計として取り組んだものを実現させたプロジェクトである。長屋を借りる交渉から始め、資金調達や改修設計、自力での工事といった一連のプロセスを経て、2003年にギャラリー&カフェとして完成させた。メンバーのひとりである藤井有美氏が、そのままカフェの経営を行なっている。カフェにはこのプロジェクトに取り組んだきっかけや、そのプロセスをまとめたポートフォリオが置いてあり、それによると「古いものの良さを見つめなおす」事をコンセプトに据えて、「古いものや懐かしいものをいろいろなかたちで空間に利用し、カフェに来た人たちがこの空間の中で自分のいろいろなものについて見つめ直してもらえたら」という思いでこのカフェを作ったという。
藤井氏によると、プロジェクトに取り組む上で気をつけたことは、ご近所への挨拶。両隣と裏の三軒にはきちんと挨拶に行き、工事中も大きな音が出るときには予め断ったり、顔を見れば挨拶をしたりするように心がけていたという。近所付き合いをする上ではごく当たり前のことだが、お年寄りが多く、しかも長屋のように近所同士の距離が近い場所に移り住むときにはこれらは大切なことである。最初に基本的な気配りができるかどうかで、「無礼な若者がどかどかと入ってきた」か、それとも「若い人達が移り住んできた」かという印象が決まり、その後の近所との関係も決まってくるのである。R cafeでは最初にしっかりと気を配った甲斐もあって、近所の方がお茶をしにきたり、お隣さんまでコーヒーを持っていったりと、現在もご近所との関係は良好なようである。 |
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左:「R cafe」外観。お隣さんへコーヒーを届ける
右:同、内観 |
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「Salon de AManTO」外観 |
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中崎町界隈の中でも一風変わった長屋リノベーションの事例が「Salon de AManTO-天人-」である。パフォーマーのJUN氏(Salon de AManTO代表)が築120年の長屋をリノベーションする過程そのものを空家再生パフォーマンスとして公開しながら、近所の人や通りすがりの人、口コミで集まった人等述べ1129人を巻き込んで完成させたカフェ&フリースペースだ。ゴミを出さないことをコンセプトにしただけに、イスやテーブルも地域の粗大ゴミを利用したり、現場で抜いた釘も再利用するなど買ったものはなにもない。そうして完成した天人は、カフェを母体としつつ、地域の人達の共有スペースのようになっている。一階はカフェになっているが、階段の下にはミニFMがあったり、トイレの横に暗室が置かれたり、天上にはプロジェクターまでついている。入り口付近にはパソコンも置いてあって、インターネットカフェの様でもある。奥には小さな庭もあり、さらに茶室やコンピュータールームまである。これらは、ここに集う人達が、自分達のやりたいことができるように徐々に作り上げていったものだ。さらに天人では、さまざまなサークル活動やイベントが行なわれている。ライブやダンス、芝居、展示会、セミナー、上映会、パソコン教室や語学教室等、天人を訪れる人達が自主的に企画し、学び合っている。 |
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左・中:「Salon de AManTO」内観
右:同、中庭 |
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フライヤー
作図+写真撮影すべて、平木康仁+山口雄一 |
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たくさんのカフェや雑貨屋ができた中崎町界隈だが、中崎町全体になにかを発信したり、中崎町全体をネットワーク化しよう、というような大げさな活動は見られない。古くからの住民とも新しく入って来た住民ともごく普通に近所付き合いを始め、緩やかにそれが広がっているのである。多くの店ではフライヤーを作っていて、仲の良い店同士ではそれらを置き合っていて、ところどころに小さな繋がりができている。店で見つけたフライヤーを辿っていく事で、中崎町内のお店の関係が垣間見える。また、小さなマップを作っている店もいくつかある。仲の良い店やオーナーのお気に入りの店等が、店の新旧を問わず書き込んであるもので、店によって異なるマップが置いてあるので、こちらもフライヤーと同様に中崎町内のお店の関係が垣間見える。 |