プロローグセッション
●街づくりガイドライン
地域性というイメージについて話しましたが、次に街づくりのガイドラインについて話します。まず7つのガイドラインがあります[fig.3-01]。まずは大きな街区で考えるということです。より大きな街区で考えることによって、みなとの街の特徴である、多様性・多時性を活かした街づくりが可能となります。2番目が立体的な街をつくるということです。立体的につくることによって高い建物や豊かなオープンスペースが可能になり、多様な街づくりができます。またそれでできた低層部を充実させようというのが3番目です。それから4番目が道路空間の整備・活用です。5番目が交通網の充実、6番目が環境への配慮、7番目が防災性の向上です。以上の7つのガイドラインを設定しております。

fig.3-01

それで、開発をする部分と開発しない部分の接点の所が重要で、そういう所をどのように扱うかということを議論をしていく必要があります。さらに、そういう所では街路空間を大切にします。立体的に街をつくることによってそういうこともできるわけです。狭い土地に建てようとすると、そういう余裕もないですから、大きな街区で考えることで例えば既存の街区を公園などを介してスケールを合わせたりすることも可能となります。森ビルの開発を見ていると、「ガーッとやっている」と見られます。新しい街をつくるとそういう視点で見られがちなのですが、常にそういった接点、それから自然のものを残していくことについては考えていく必要があると考えながらすすめていることをここでは示しています[fig.3-02]

fig.3-02

●大きな街区で考える
次に、先ほど挙げた「大きな街区で考える」について説明します。これは、より大きな街区単位で街づくりを考えたほうがよいということです。例えば丸の内の丸ビルの街区は1haで、新宿の副都心のビルあたりは1.5haです。1haだとほとんど低層部がない、1.5haというのは少し低層が入り出したというスケールだと思って下さい。4haくらいの街区で考えると、その中に歴史的に保存が必要な建物があったとすると、それをよけて計画することが可能になります。だから街区はなるべく大きく考えたほうがよい。それから1haごとに建物を建てると、ニューヨークではないですが、建物と建物の見合いや距離がものすごく近くなる。ところが4haだと隣の建物を除けて、近い部分は少し距離をおいたりする工夫ができ、そこに広場をつくることが可能になります。
さらに、その街区をネットワーク化して繋げていく。例えば、2階レベルをペデストリアンデッキで繋いでいだり、起伏のあるのが港区の特徴なので、山のあるコンタのラインで繋いでいったりします。街区をネットワークすることによって、大きな公園をつくることや連続して歩車道を整備したりすることが可能になります。エネルギーの相互補完や歴史的資源や水の保全や活用は、大きな街区、さらにネットワーク化して考えていくと可能になる。大きな街区というのがグランドデザインになり、それはひとつの企業で全部はできるわけではないのですが、グランドデザインの考えとしてはまとめておいた方がよいと思います。
この図は立体的に街をつくって、建物の上も緑化したものです[fig.3-03]。先日、シカゴに行ってきたのですが、シカゴの街は地面の下にさらに道路があるように、非常に立体的につくられています。それとはちょっと違いますが、立体的に街をつくることが重要で、さらに超高層と多機能な低層をつくっていくことがよいと思っています。

fig.3-03

低層部についても、コンプレックスでコンパクトな街をつくるためにデッキを設けたり、人が歩くゾーンと車が通るゾーンを設けるなど、街区で考えればいろいろな工夫ができます。六本木ヒルズの66プラザはデッキ階にあるのですが、そういうデッキで建物が繋げていきます。立体的につながっているため歩いていて迷いそうだという批判もあるようですが、六本木ヒルズではその考え方を実践しています。それから新橋のような平坦地は、既存の守るべき街並みと併せて低層の建物をつくったり、低層の建物の内側に逆に新しい街の顔をつくることも可能です。また西側の傾斜地は傾斜を利用したり、高さによってはデッキで他の街区と繋いだりする。それから、大江戸線のように地下が深い駅では、日建設計がやった六本木1丁目の泉ガーデンのように、地下を掘って光を入れるという立体的な手法を使うことによって、地下でも光が入ったりといろいろな工夫ができます。
低層部の充実としては、緑と水のオープンスペースや賑わう施設、安全な移動空間が考えられます。屋上というか、デッキの上部は災害時の避難場所にもなります。地上とデッキそれぞれを立体的につくることで、その間はさまざまな都市のサポート空間も考えられます。それからデッキ下の道路と同じレベルは駐車場や荷さばきをつくります。あるいは建物の下、または地下に防災施設や災害に備えたシェルターを設けることもできます。
そういうガイドラインに沿った道路空間の整備とありましたけれど、道路も街づくりの一環として整備することが重要です。その時に、トラフィック機能、交通を中心とした機能とアクセス機能、建物の出入り口とか荷さばきのために荷下ろしに来るという道路、またそれをサポートする機能、というように道路をヒエラルキーを付けて整備する必要がある。そういうことをここでは言っております。それから、道路沿いの空間を快適な空間として整備する。これは例えばイメージとしては、東京タワーが先に見えているのは外苑東通りあたりをイメージしているのですが、車線を広げ、歩いて楽しい道をつくる、ということができればと思っております。表参道の幅員が36メートルで、御堂筋が44メートル、シャンゼリゼ通りは70メートルもあり、外苑東通りは現在20数メートルです。そこら辺のポイントとなる道路は2016年、2020年のオリンピックまでの間に整備できればよいと思っております。
立体的に使う点で言うと、交通もいろいろなヒエラルキーを付けるべきです。例えば、一番下は地下鉄です。地盤レベルはバスや車です。デッキレベルで自転車をどこに置くとかいう問題はこれから議論が必要ですけれども、人を中心としたコミュニティ交通くらいはデッキレベルにあってもよいのではという提案をしています。コミュニティ交通はバスに近いもので、300メートルくらいで停留所があるくらいの、歩いても苦にならないくらいの距離です。
それから、環境に配慮することがあります。これは地球温暖化・大気汚染抑制、ヒートアイランド、省エネルギー・省資源などいろいろ言われています。当然新しい街をつくることによってそういうことが確保できるし、さらに大きな街区でいろいろなことを考えられる、つまりスケールメリットで環境に貢献できるのではないか。
防災性の向上という意味では、六本木ヒルズも自家発電で、地震が起こっても3日間くらいは電気は大丈夫です。それから備蓄倉庫を用意したり、井戸なども掘っております。そういうものを新しい開発、新しい計画の中に取り入れて、免震・制震等は当然取り入れますから、街区として地震が来た時にそこから逃げていくのではなくて、そこに逃げ込めば何日間かは暮らせる街をつくることが可能です。
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