Renovation Archives [012]
ISSHO建築設計事務所
● 住宅[雑居ビル] VOXEL HOUSE

概要/ SUMMARY

写真左=改修前
雑居ビルの1室。クライ アントは研究者。室内より玄関を見る。り

写真右=竣工後の住宅
クライアントの所有物が 棚に納められた状態
設計概要
●用途=住宅
●構造規模=内装のみ
●主体構造=内装のみ
●面積規模=延床面積 約42平米(改修部分)
●建築年月日=1965年
●リノベーション年月日 =2004年
● 企画・設計=ISSHO建築設計事務所(担当:ベラ・ジュン+藤村龍至)
雑居ビル の1室を改修。1Rの間取りの中に、2列の収納棚が挿入されている。
クライアントが改修後の1Rに求める居住性は、自身の所有物を収納できるキャパシティと、いつでもどこかへ引っ越すことのできる軽さ、であった。《VOXEL HOUSE》は住居に求められる諸機能を組み込んだ2列の収納棚を室内に挿入することで、クライアントの想う住居像に応えている。
挿入された2列の収納棚は、壁に沿って複雑に折れ曲がり、玄関からリビング奥の開口まで伸びている。居住者のすべての所有物はA4サイズに分節された棚に納められる。A4サイズというのは引越し業者の小箱(ボクセル)の大きさに合わせている。この収納棚にキッチン、冷蔵庫、洗濯機、ベッド、カウンターテーブル、ソファー、デスクが同化して、複雑な形状を構成している。この複雑さは「意図が複数並列している複雑さ」であるという。「小箱のサイズや家具の高さに合わせたグリッドによる立面と、家具の奥行きや視界のコントロールを反映した不定形による平面の組み合わせによる複雑な立体を用いることによって、機能性と空間性を両立させようとした。FL+800mmを基準線とし、家具のサイズや配置に関わる下部の構成と視界のコントロールに関わる上部の構成を接続している」(ISSHO)。
所有物と同様に、生活に必要な諸機能が室の両サイドに収納されているため、すっきりとしたオープンスペースが確保されている。室内は収納棚が新しい内壁となり、そこに造り付け家具のように諸機能がはりついているような一体感がある。これは室が分節されていない1Rの特性が活きている。実際に、改修後の室を訪れた人からは心地よいという感想が多かったという。「腰(約800mm)より上のラインの構成をその場その場に合うように、包まれた感じに構成したり、広げたりした結果ではないかな」(ISSHO)。改修によって収納力のなさを克服するだけでなく、所有物を可視化するという操作を行ない、クライアントの要求する生活の軽さを捉えた計画となっている。
収納棚はシナランバーコア、一部ウレタン塗装。工場にて製作し、室内に搬入。
その他にフローリングをパイン材に張り替える、天井を剥がすといった改修が行なわれた。
施工プロセス/ PROCESS

収納棚は工場にて製作

シナランバーコア t=18mm 小口テープ+ワックス、一部ウ レタン塗装

室内解体 天井と床を剥がした状態

収納棚取付け

収納棚は工場にて仮組み

竣工/COMPLETION




内観パ ース


PLAN
左/SECTION 右/ ELAVATION

所有物が入る前 すべての棚が取り付けられた状態
室内より玄関を見る 

所有物が入る前 玄関より室内を見る

所有物が入った後
デスク

床=パイン材  t=30mm+オスモカラー
天井=RC一部モルタル補修の上AEP

収納棚にベッド が組み込まれている

室内より玄関を見る
■コメント
クライアントの要望をダ イレクトに表現できているだけでなく、室内は心地よさも感じるという。棚の 形状に関するコンセプトも興味深い。空間性に関する構成と機能面に関する構 成とが上下に並列し、FL+800mmのラインで接続されている。小箱に分けられた 所有物は、実際に引越しをする時にも便利そうである。1Rのリノベーションと いうことだけでなく、要望や問題の捉え方や、それを表現していくプロセスが 興味深い。(吉岡誠生)

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