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FORUM No.05(2007.1.25)

角田誠
住宅産業における3Rの取り組み

SESSION03

200年住宅の限界

松村秀一──今日の話はやはり難しい問題です。リユースやリサイクルをやる理由は漠然とした不安ではないかと思います。例えば、廃棄物処理場がなくなってきているといっても残余年数は上がってきています。「ゴミ処理場はあと何年で一杯になります」「石油は何十年後になくなります」「二酸化炭素をこのまま出し続けたら気温はどんどん上がります」と言われ続け、日夜そういう情報に接していると、みな漠然と不安になってきます。環境教育も徹底してきています。だから誰もが明確にわかる目的で動いているわけではなくて、漠然とした不安をお互いに持つなかで、ある方向性が出ているのだと思います。そこに「もったいない精神」も加わって、もう少しわかりやすくしようというニュアンスで進んでいる。
それから積水ハウスが広域で回収して処理している工場を見に行くと、ここまで、こんなものまで分別しているのかと感動的です。ものをつくっていくことと同じで突き詰めていく人間の姿がそこにあります。そうすると、いい加減なのよりきちっとしたほうがよいという人間活動のベクトルが個々の場面で働いて、皆徐々にそちらの方向に突き進んでいく。突き進むとあるレベルで社会全体が動いていきます。だからなぜやっているのかがわからなくなることが多い分野だと思います。学生にも非常にわかりにくくて「なぜつくることを学ぶ前に解体現場の調査しないといけないのですか」という質問が出てくる。しかし、こういう方向で新たな価値をつくっていく世界が現われているのだと思います。周りが動いてくると、例えば静脈産業でも5年前では整備されていなかったところが、現在でははるかに整備されるようなって、ある資源を受け入れられるようになる。あるいは解体して10年前には分別していなかったものが分別してくれるようになるというように、技術が少しずつ上がってくると経済的に成り立つという局面がきます。例えば分別している原料を入手するのにたいしたコストがかからないからリサイクル会社をつくってみようかということも起こります。

松村秀一氏


山本──リサイクル産業というように産業として成り立つ可能性についていうならば、すでに成り立っていると思います。なぜなら3Rは、生産してものを売るという前提がないと成り立たない概念で、それは消費社会の経済活動ときちんと呼応しているからです。逆に3Rの理念だけを純化していくと、ものをつくらない、消費しない、現状に皆満足して文化も発展しないというのが一番よいわけで、これは「住環境のための建築」とは大きく矛盾します。このように理念と、実際に推進力となっているものとのちくはぐさがあり、消費者もこの矛盾を抱えたまま進んでいかなくてはいけない。

松村──地球環境と関係なく、これ自体が目的で、つまり人間なのだからきちっとしたいということです。使えるものは徹底的に全部使うという方向で産業が動いていくとしたら、この産業のための技術も開発しないといけないという、発想としてはつくる側の産業と同じ構えです。だから最終的にはどんどん消費するという考えです。天然資源を集めるのと違って、解体しないとゴミが出てこないので、それを原料として考えた場合はものすごく不安定です。製造業として考えると、解体現場に探しに行かないと原料が集められないので、原料の入手は不安定なことが多すぎます。さらに長持ちさせることとこの問題が、同じ目的だと括られて議論されていることが複雑です。今までの技術の方向だと、長持ちさせようとすると複合度を高くしていくことになります。例えば200年に一度しかこない地震に耐えるために頑強につくると解体しにくくなっていきます。一方で、資源は循環させなくてはいけないので解体しやすくしなくてはならないのに、その二つの方向が矛盾なく聞こえてしまう土壌で議論していたりする。これはおかしいと思います。仮に建築の寿命を10年としたときに成立するための問題の立て方はあるけれども、寿命200年の建築で、200年後に解体しやすい技術というのは通用しません。

山本──200年も何もしないことを経済社会が許すはずがない。200年もつ住宅を建てたとしても、どんどん新しい付加価値が提案されて、よくなるから建て替えましょうという力が絶対に働くはずです。そう考えると200年住宅という言説ほどナンセンスなものはありません。

松村──200年住宅というのは、200年間建て替えられなくなるわけです。今の経済状況、経済力、平均年齢からすると40年で建て替えることは普通です。借金もできるし、それだけの稼ぎもあるし、35年住んでも死なないだけの年齢で家を買える人がたくさんいるからです。そうではなくて、社会全体がジトーっとしている方向になると、住宅や建築は長持ちしてしまう。200年ではないけれど、100年ぐらい壊さないのも当たり前になってくる。しかし長くもったときにどうするかこそ考えるべき問題だと思います。

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