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FORUM No.02(2006.8.28)

望月久美子
「住生活1000人調査 2006」──住宅像の現在

SESSION03

生活志向は年齢によって変わるのか

山本──松井先生もおっしゃいましたが、今の40、50代の志向というは世代的な問題なのか、年齢の問題なのか。家は大金を叩いて買うものなので、消費者は雰囲気に流されてものを決めてはいないと思います。30代で家を持ちたいと思う人が一番多い理由は、ローンを組みやすいなどの年齢的な理由があると思うのですが、そのときに、このまま一生借家暮らしをするか、持ち家を買うか、もう少しお金を貯めてから買うか、というようなことをそれなりに判断されるのです。そしてその時の判断をずっと継承したまま歳をとっていく可能性があると思うのです。すると先ほどのデータは10年後にはそのまま10歳分シフトするだけになるのではないかと思いながらお話を聞いていました。

松村──食べ物に対する趣味はかなり変わります。若い頃はフランス料理を平気で食べていたけれど、40を越えるともうあんな脂っこいものはだめで、先ほどのデータの自然志向に近い感じがある(笑)。そういう食べ物の志向などは世代ではなくて年齢で変化することがあるから、年齢によって変わることと、世代で決まることがミックスして結果が出ていると思う。

山本想太郎山本想太郎氏

山本──紹介されたデータで、男女別の回答がある理由がよくわからなかったのですけれど、マーケティングの大前提にあるのが家族制度で、夫婦で住むことを前提にしたからこそ男女の統計をとる必要があったのではないかと思います。家族制度自体ももつかどうかわからないのですけれど、家と家族が一致していることがもう恣意的なことだと思います。現在の家族制度はある社会制度で、必ずしも動物としての本能的な感覚からくる家族ではない。だから商品開発のマーケティングにおいて洗い出される家のイメージや嗜好は、かなり二次的欲求に結びついているのではないかという気がします。食べ物は年齢によって体力も身体の構造も変わってくるので好みが変わってくるけれど、家のイメージや嗜好は外部的に与えられた好み──と言い切ってはいけないとは思うのですが──なので、年齢に依存して変わるというものではないのではないのかとも思います。

松井──僕は変わるのではないかと思いました。なぜ田舎暮らしをしたいのかというとき、マスコミの役割が大きいと思っています。ある人が、これまで一生懸命働いてきて定年になってこれからどうしようかと考えたとき、漠然としたニーズはあるけれども具体的な解はないところで「田舎暮らし」という解が目の前に出てきたのだと思います。その解がたまたま「田舎暮らし」だったというだけで、もしかしたら全然違うものであったかもしれない。そもそも質問肢の中に「田舎暮らし」という選択肢があるところに、世の中の動きが現われていると思う。ですから外部の環境から人間が住むという根源的なニーズも変わりうるという逆の印象を持ちました。
あと住まうということを考えると、家を買うのは人生で一度か二度の経験ですから、ほぼ初めての意志決定です。だから普通にものを買うのとは違って、過去の経験はほぼ役に立たず、周りからの情報と本当にそのときの判断でしかないわけです。その判断は時々の状況に応じてものすごく変わってくるという意味で、三つ子の魂百までではない世界だとも思いました。

望月──家を求めるときに何を優先して考えるかというと、何に住むかではなくて、どこに誰と住むかです。その次に何にどのようなかたちで住むのかが問題になります。だから家と家族が必ずしも同一のものではないとなると、これまでの暮らし方が崩れてきてしまい、なんでもありというか、かなりバリエーションが増えてくる。そういう選択肢もあるという暮らし方ができるかどうかによってその辺の話が変わるのですが。子供が一人暮らしをするとき、一人で住むとなると通勤が便利な場所を決めて、そして自分の経済力などでモノが決まってくる。つまり先にモノありきではありません。結果として誰と住むか、自分がどこに住むかの選び方と働き盛りで仕事を優先するとか、仕事から解放されて自分の趣味の生活を満喫するのを志向するといった自分のポジションによります。

松村──煽り方によって誰と住むかまで変わるとすると、いい年になったら一人で住むのがかっこいいと煽っていくと、みなそれに適応していく可能性は十分あります。夫婦で女性が先に亡くなった場合は亡くならない人と比べて男の余命が統計的に1/3になるという話を聞いたことがあります。ところが逆に男が先立った場合は女性の余命が3倍になるらしいのです(笑)。もし女性の場合は一人になったほうが元気になるのだとすると、必ずしも子供が育った後に夫婦が一緒に同じ家で住むという必然性はないのかもしれない。東急不動産の「ビッグウィーク」はマルチハビテーション的に使われているのですか?

望月──別荘的に使うものとはやはり違って、旅行でホテル代が安くなるといったほうがよいかもしれません。最初は別荘という意向でしたが、実際は旅行者向けです。

松村──東急不動産ではマルチハビテーションの事業展開はあるのですか?

望月──まだないです。現実にはお金の問題があり、マルチではできないので、どちらかを賃貸というかたちでシステム化すればできるという話は話題にはなっています。

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