INAXe`Ze¨O´e´YaΔE´tE´HA°[E´a^E´A¨ INAXE´tE´HA°[E´a^E´A¨E´VE´a¨A°[E´Y
FORUM No.02(2006.8.28)

望月久美子
「住生活1000人調査 2006」──住宅像の現在

SESSION02

田舎暮らしというニーズ

望月──それから団塊ジュニアの「世代か、年代か」という質問ですが、30代前半の家族形成期が戸建て志向の時期になっていると思います。だから現在の30代前半の団塊ジュニアに、シンプルに自然が豊かで地べたのあるところで子育てがしたいという志向があるのだと思います。そういうところでのびのびと子供を育てることがピンときたときに、マンションよりは戸建てという選択になり、40代になって子供が大きくなると教育環境という点にシフトしていきます。よい学校や環境がよいところに関心が強くなると、戸建てかどうかは二の次になります。

松村──30代前半は庭付き一戸建ての広さを必要としているけれど経済的な実力が伴わないから賃貸に住んでいますが、本当ならこの段階で住むべきですね。

望月──先ほど購入と賃貸の金額はあまり変わらないと言いましたが、マンション購入者と戸建て購入者の一番違う点は家族数です。マンション購入者の家族数は約2人、戸建て購入者は約3人。要するに子供がいるかどうかです。

松村──この調査に限らず、マンションを買う人と戸建てを買う人は最初から完全に分かれているのですか。つまりマンションでも戸建てでも立地さえよければよい、広さが満たされていればよいというふうにはならないのですか?

松村秀一松村秀一氏


望月──ならないと思います。最初から戸建ては戸建てというイメージがあります。これは50代以降の世代の問題なのかどうなのかはまだ解明には至っていません。先ほど述べたような男性志向、女性志向というかたちで強く現われてくるのは、定年を過ぎた50代以降あたりからで、だからこれもある意味では世代や年齢に関わってくる。

松村──松井さんが驚かれたというのは、50代の方がこんなに自然と親しみたい、田舎に住みたいと言っているのは、リアルにそうだとは思えないということですか。

松井──僕は田舎志向というのはマスコミの虚像だと思っていますから、本当にそうだったというのが驚いたところでした。マスコミの虚像にのって想像するに、例えば、男は会社というコミュニティではかなり濃密な人間関係をつくってきたけれど、地縁という意味でのコミュニティではそういう関係はほぼゼロに等しい。それでここから仕事を辞めたら何をしたらよいかといったときに、自分が向き合えるのは自然しかないという(笑)、かなりステレオタイプな見方です。それほど深刻な悩みがあるのかなというイメージを持ったのですけれど。

山本──田舎のイメージと実際の暮らしとはだいぶ違うと思います。今新潟のほうで仕事していて出会う方で、都会から現地に移ってきた方も結構いるのですが、みなさんものすごく忙しくて、のんびりなどしていない。自然と親しんではいますけれど、人間関係は東京とは比べものにならないほど濃密なので、社会性を放棄しているなどということはまったくない。ただそれはリアルな話で、田舎に住みたいと思っている人たちがどのようなイメージを持っているかは別だとは思います。

望月──たぶん田舎に憧れているという感覚で、今でいう「癒し」に近いのでしょう。住み替えるという行為は、その場がどこなのかという違いはあるけれども、女性も男性も含めて自分の生活をリセットすることなのかもしれません。そういうことが50代以上の人たちにとって重要な意味を持つのではないかと思いました。リタイアしてから新しく私人(わたくしびと)に戻るわけですけれど、そのときにどのような暮らしをするか。今の生活を変えないでいろいろなかたちでリセットする人もあるでしょうけれど。格段に変えるという意味では住み替えをするのはすごくおもしろい。新しい生身の自分自身の生活をそこでつくり出すわけです。その前の生活は社会的生活における役割や家族の中で稼ぐという役割で、自分でつくる生活ではなかったかもしれない、そういうものから解放された時に自分で生活をつくっていくことが一番ポイントでしょう。それをダイレクトに農業やガーデニングをしたり、近所の人たちと行動を共にするというように、今までは考えなかったことも経験したりする。そういう意味では住まいを変えることを支持したいと思います。

松村──ひょっとすると団塊の世代特有のことかもしれないですね。団塊の世代が若い頃、都会での生活を捨てて農村に行く、医者になったら無医村に行くようなことが流行った。若い頃に反体制で、ヒッピームーヴメントやサブカルチャーの洗礼を受けてできた価値観があって、定年を迎えたときに他の世代にはない欲求が出るのかもしれない。

PREVIOUS | NEXT