INAXe`Ze¨O´e´YaΔE´tE´HA°[E´a^E´A¨ INAXE´tE´HA°[E´a^E´A¨E´VE´a¨A°[E´Y
FORUM No.02 (2006.8.28)

望月久美子
「住生活1000人調査 2006」──住宅像の現在

LECTURE02

どのような家に住みたいか

次に居住地を都心からどれぐらい離れたところに求めるかということを、借りる場合、マンションを購入する場合、戸建ての場合でそれぞれ聞きました[fig.2-01・上図]。借りる人とマンションを購入する人との希望立地の分布、つまり都心、都心から30分圏内、60分圏内、それ以上という割合がほぼ同じです。それに対して一戸建てを購入しようとする人は、中心は60分圏内からそれ以上、特に自分の建物を建てたいという希望が強くなればなるほど地方で田舎という、他の層では絶対に出てこないパターンが希望として出てきます。この結果を見て、結局どこに立地するのかが、住まいとして一番優先されていると思いました。だから所有するから遠くでよいとか、借りるから近くでなくては嫌だということではありません。都市型マンションや共同住宅という形態が立地するに相応しい地域がなんとなくできていると感じました。まず経済性や利便性で立地を選んでから、次に何に住むかを決めるのかなと思います。それから戸建てかマンションかという選択肢のなかで賃貸も含めて、一番市場でバッティングしているのは近郊60分圏内です。ここが各々30%くらいで3者が競争しあっているところです。それから30分圏内はかなり賃貸を含めたマンション系が市場を占めています。
次に住宅の選択の重視点についてですが、借りる場合もマンションや戸建てを購入する場合も「緑豊かな自然環境」、「空間のゆとり」、「地域イメージ」の重視度が押並べて高い[fig.2-01・下図]。また、借りる人もマンションや戸建てを買いたい人も「街並み」に対する関心が高い点が今回の調査で注目した点です。大手ハウスメーカーの住宅であるかどうか、子供にとってどうか、高齢になっても暮らしやすいかどうかなど関心はいろいろあり、街並みは借りる人にとってそれほどのものなのかという疑問があったのですが、居住環境が住宅を選ぶときの要因として入ってきた、少し明かりが見えてきた、という印象を持ちました。

fig.2-01[拡大]


そういったことを背景にして、具体的に魅力を感じる8つの暮らしを提示して、どのような生活に夢を感じているかについて調べました。ライフステージ別にばらつきがあるものの、トップは「便利でおしゃれな都心に住み、都会生活を堪能する」で、49歳以下ファミリー以外の各層で高い支持がありました。
ただ、「自然環境の恵まれたところで暮らす」とか、「田園風景の中でゆったり暮らす」という点にファミリー系の人たちが反応していますが、注目したのは、ファミリー、特に若手のファミリーが「新しく計画的に開発された郊外住宅地で暮らす」ことに魅力を感じている点です。つまり、そろそろニュータウン二世がファミリーをつくるようになり、支持され始めているのかなという印象を持ちました。
 それから「どのような場所に住みたいか」と聞いてみたのですが、鎌倉・逗子・葉山という自然環境と地域イメージが良い場所が人気で、恵比寿・代官山・吉祥寺・自由が丘が続いています。各年齢層ともそのあたりが上位に挙がっていますが、シングル女性だけは少し違う地域が挙がっています。典型的なのは目黒、神楽坂、市ヶ谷で、この地域はなんとなくシングル女性に響くらしく、他の層とは違うおもしろい点ではあります。
今度は住んでみたい家について聞きました。全体的にはっきりと希望が出てきたのが「環境に配慮した家」と「セキュリティのしっかりした家」です。特にセキュリティのしっかりした家は各層で圧倒的に支持されています。次に環境に配慮した家も強く支持され、特に高年齢層には支持が高い。オール電化は最近騒がれていますが、住宅は支持率としては半分以下で意外に低かった。バリアフリーも年齢によって支持率が変わってしまいます。ペットと暮らせる家も好き嫌いでバラつきがあると思います。お金をかけても欲しいと思う点として、環境、健康、防犯が挙げられています。とにかくセキュリティに関しては非常にニーズが高く、少々煽られている部分もあるかと思うのですが、お金をかけておきたい点としてはっきり出ています。
それから何よりも基本構造の強化を望んでいて、姉歯問題が騒がれたこともあり、当然のようにこの点も強く希望しています。地球環境への配慮となると、環境に配慮した家は支持はしていましたが、お金をかけてまでやるかというといらないわけです。またマンション共用施設にお金をかけるかとなると、いらない。実質的に自分たちの生活にコスト面や安全面も含めて、ダイレクトに響いてこないものにお金をかけることには厳しいものがあるようです。
ここで一部を市場構造という点で簡単にまとめてみます。まず今後の住宅市場で、賃貸市場はこれから広がっていくのだろうかと昨今話題になりますが、全体にみると持ち家優勢の構図は変わっていないと言えます。賃貸は20代を中心にしてピークになり、それに対して持ち家は30代前半から40代前半までで決まり、「住宅スゴロク」的なところがまだ生きているのかなと思います。それから持ち家と賃貸の市場は、月額家賃15万円がひとつの分かれ目だと思います。仮に家賃15万円をローンの支払いに充て35年ローンで考えると、3700万円ぐらいは借りられます。そうなると購入予算の3700〜3800万円と見合ってしまうわけで、そうなれば自然分譲市場に流れていくと思います。賃貸市場がなかなか広がらない理由は、費用の部分で対抗できる、賃貸だから得られるものがある、たとえばもう少し安い金額で居住性がアップしたりといった、分譲とどう勝負していくかがまだ市場としては見出せていないと思います。
第1部を商品化の視点でもう一度まとめてみると、まず形態と立地ではマンションか戸建てかは拮抗しているということと、立地選択はどういうものに住むかで決められています。マーケット的には職場から30分から60分圏内が賃貸・分譲マンション・戸建て希望が重なり合っているところであり、激戦区ゆえの商品化の工夫が必要なところといえる。もうひとつの注目点としては、戸建て希望者の中に、地方、田舎の立地があります。レクチャーの後半で50代以上の住まいの意識で紹介しますけれど、この世代がリードして商品開発が出てくる可能性があると思います。つまり、50歳以上の方々の自然や田園風景への憧憬をどのように商品にしていくかが、新しい商品開発になると思います。またニュータウン二世が育っていると言いましたが、今の郊外生活の継承者としてそこでどういう住まい方を継続させていくかという問題もあり、単に郊外が過疎化するという問題だけではないと思います。それから注目のスペックやオール電化、マンション共用施設は使い勝手や経済性を考えると、納得性がないと広がっていかない、ということだと思います。

PREVIOUS | NEXT