Renovation Interview 2008.9.30
美術と建築を横断し、社会を知る──金沢におけるCAAKの試み
論考]新堀学
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さまざまなマージナルをつなぐ|新堀学
このインタヴューにおいて、特に興味を持っていたのはさまざまな「あいだ」がつながれる場所としてのCAAKのあり方だった。
たとえば、CAAKのメンバーは「金沢の外から来て金沢に住む」人や「金沢で生まれて外と金沢を行き来する」人によって構成されている。「内と外」をまたぐポジショニングというものが最初から共有されているのだ。また、《金沢21世紀美術館》との関係においても、「美術」と「建築」の関係においても、主従がないかたちを取りつつある。どちらかの一神教的な世界観ではなく、それぞれが共存する視野からの思考が普段のこととして行なわれている。そして、町家を利用した活動スタイルのなかにも、「保存と計画」「利用と所有」「ユーザーとプランナー」とがつながる現場を共有してみるという実験的な意味が込められている。
また、CAAKのありかたに関する鷲田氏のイメージの中に「オルタナティヴ」という概念があったが、どちらかというとその言葉から連想される「対立的な」イメージというよりは、むしろ「接続的な」イメージをCAAKの精神に感じたインタヴューだった。
これからのCAAKの活動がどのように展開していくのかについて、少し分析的に考えてみると、ひとつはメンバー自身がマージナルをつなぐ「触媒」となるような職能のありかたを目指す方向があるだろう。これは『10+1』No.49で書いた拙稿の中の第三の職能像=ファシリテータ的な「都市にかかわる職能」にもつながる。
もうひとつは、今回の「アートプラットフォーム」展のタイトルでもある、「プラットフォーム」というマージナルをつなぐ空間性を持った「場所(これ自体がマージナルな存在なのだが)」をつくっていく方向。これについては、《21世紀美術館》のオルタナティヴ・エクステンションとしての機能、性能を既存のまちや空間からどのように引き出したり付加するのかを考えた「まちのリノベーション計画」に展開するのだろう。そのマージナル・ゾーンが金沢というまちに挿入されたときの金沢の変容が楽しみだ。
一般的に、マージナリティを保持したままで展開していった活動事例は珍しい。通常はいくつかの固有のミッションに変質しながら収束していくのだが、あえてCAAKにはこの「あいだ(=マージナル)」という非決定性を次の次元で社会的につなげることを期待し、注目し続けてみたいと思う。»

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