セッション
司会──今回はINAXリノベーション・フォーラムの最終回です。前回まではゲストの先生にレクチャーをしていただいてきましたが、今回はこれまでの12回を振り返り、総括するかたちで進めたいと思います。ディスカッションの前半で12回までを振り返り、その後にコンバージョン、リノベーションの可能性についてお話しいただきたいと思います。またメーカーとしての可能性などについて、会場にいる当社の営業部門、商品開発部門、スペースプランニング部門の社員にも意見を聞きたいと思っています。

●12回のフォーラムを振り返って
太田──第1回目から2年近く経っていることに驚いてもおりますが、得難い経験をさせていただきました。今までの12回は三つのパートに分けられていて、まずは事例、二つ目が不動産を中心とした企画・運営について、三つ目は地域にどうつなげていくかと議論を重ねてきました。最初は建物だけを見ていましたが、その視点が次第に上空へと昇り、社会を俯瞰していくようになった訳です。リノベーションを通して社会・都市への考察に展開したことは重要な成果だと思いました。
それぞれの回には講師の方から示唆に富んだキーワード、手法が提示されました。そのようなポイントをまずは松村先生、難波先生と私で挙げていってみたいと思います。松村先生からご感想をおうかがいできればと思います。

松村──この問題領域について前から考えていることですが、今まで建築のプロとして仕事をしてきた個人や企業の対象は、今後は地域と部品になると思います。5回までの事例紹介では、それぞれ建築家や建築の専門家としての姿勢についてお話しされたのですが、最終的に残るのは建築全体ではなく、個々の地域と部品の二つだという感じがします。
それから、ストックを前提として考えていく時に、このフォーラムでは利用者、生活者の話があまり出てこなかったと思います。石山修武さんの第8回で、生活者の発想のほうが建築家より先に行ってしまうのではないかという趣旨の発言があったと思いますが、僕もそう感じています。そうすると、生活の場に関しては建築家は余計なことをしないで欲しいということになっていく。その代わり、地域や個々の技術や部品は、利用者の手が届かない専門的な知識、経験、バックグラウンドとしての産業の力が必要で、そこが強調される形で残っていくだろう、というのが全体的な印象です。
5回の事例は、第3回の青木茂さん初回のIKDSの例も都心部で建築家が関わったコンバージョンとしては最初ですし、第2回の中谷ノボルさん第4回の近角真一さんの例もチャレンジングでたいへん面白かったのですが、3年後にこういう事例を並べたときに、事例はもういいとなり、そのときに何が残るかというと、地域と部品だと思います。

太田──第5回の安孫子義彦さんがそういう専門的な配管部品の話をされていました。

松村──安孫子さんの話のようなものがリノベーションではクローズアップされるべきだと思いました。

………>>NEXT

HOME