最後に、どういう状態であれば保存、再生、建替えができるかというと[fig.5-02]、事業主体が明確であるということと、その後の利用、管理運営主体が明確であることが非常に大事だと思います。基本的に、受益者が資金を出すという仕組みがないと、残そうとか建替えようといっても無理です。つまり事業の仕組みが構築できるかどうかです。また、権利関係が単純であること、あるいは合意形成が可能であることが大事で、区分所有建物は最悪だということになります。定期借地権も最後に建物を壊して更地にするというだけでなく、建物を無償で地主さんに戻すという仕組みを選択できるようにしておくといいと思います。そこで残す価値があれば、手を入れて残すし、残す価値がなければ壊して考える、あるいは手に負えなければ手放すということで、いずれにせよ再生が可能だと思います。区分所有建物の場合、残すには同意とお金がかかりますし、建替えでも5分の4以上の賛成が必要となると、容積率がアップするとかいろいろなことがないと建替えもできません。また、残す価値があるかどうかについて、そもそも意思決定できないという状況になってきます。保存、再生する場合は、やはり建物自体に保存、再生すべき価値があることが前提となりますが、そのためには先ほども言いましたとおり、創建当時の経緯、当初の竣工図や管理運営記録、大規模修繕の記録など、建物自体についての記録ができるだけ詳細に残っていることが大事なのではないかと思います。さらに保存、再生、建替えを行ないたいという人々の強い意思や愛着があることが決め手になってくるのではないかと思います。[了]
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▲fig.5-02 |
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