Renovation Archives [046]
at-table
《8-studio》
《8-FACTORY》《三福ビル》《co7》《三谷・海老原邸》《Floor and Walls Hacchobori》
●八丁堀を中心としたエリアコンバージョン
取材担当=吉岡誠生

概要 /SUMMARY


左:《Floor and Walls Hacchobori》改修前内観
右:同、リノベーション後内観 写真=(C) daichi ano
■東京都中央区八丁堀、銀座の喧 噪から程近いこの地域は、都心の便利さとは裏腹に空家やオフィスの空室率の高い地域である。一級建築事務所at-tableは都心に点在する空洞化した地域 に目を付け、コンバージョンによる地域の経済振興や、文化・社会的な地域振興も含めた都市再生をその活動理念にかかげ、2002年から八丁堀を拠点とした エリアコンバージョン(地域再生)の活動を行なっている。このプロジェクトの発端である《三福ビル》は空襲を免れた空きオフィスビルを彼等がまとめて借り 受け、SOHOへと改修したもので、彼等の活動当初の拠点となった。この改修を起点に、築40年になる表具屋を改修し、シェアハウスというスタイルの都心居住 を示した《8−FACTORY》、イデーアールプロジェクトとのコラボレーションによる《Floor and Walls Hacchobori》、八丁堀から程近く市場の移転を控え空洞化が懸念される築地の空きオフィスをSOHOとした《TSUKIJI-00》へとプロジェ クトは発展中である。彼等は、中央区ネイティブネット(CNN)という中央区で都心居住をしたいという人たちのネットワークを形成しているが、これがここ での改修物件の入居ウェイティングリストとして機能している。これは不動産のオーナーといった供給側にコンバージョンによる都心居住の有効性や資金の回収 計画を説明する際の手段となっているが、彼等は個々の改修とこういったネットワークを融合させてエリアコンバージョンを行なっている。
設計概要
所在地=東 京都中央区八丁堀、築地
用途=SOHO、イベントスペース
構造= (S)、(T)、(F)鉄筋コンクリート造、(8)木造
規模= (S)地下1階,地上4階(8)地上3階(F)地下1階地上7階(T)地上5階
施工面積= (S)55.00平米(8)***(F)821.07平米(T)92.40平米
リノベー ション年月日=(S)2002年12月(8)2002年10月(F)2003年5月(T)2003年10月
設計・監理/デザイン監修=
一級建築士事務所at-table
《三福ビル》=(S)
《8−FACTORY》=(8)
《Floor and Walls Hacchobori》=(F)
《TSUKIJI-00》=(T)

八丁堀のリノベーションマップ
1.
《8-studio》
2.《8-FACTORY》
3.
《三福ビル》
4.《co7》
5.《三谷・海老原邸》
6.《Floor and Walls Hacchobori》
施工 プロセス/PROCESS

(C) daichi ano

(C) daichi ano
《三福ビル》map-3
築70年のオフィスビルを全館SOHO仕様に水廻りを更新した。若者がいないと住民からも嘆かれていた地域であるが、改修後のインテリアがメディアで取り 上げられるなど、若いクリエイタ−たちが八丁堀へ集まる動機となった。コラボレーションオフィスなどとして使用された後、現在は他の借り手により使用され ている。
上左:外観
上右:改修前内観
下:リノベーション後4階平面図
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《8−FACTORY(&8-studio)》map-2、1
ルームシェアハウスのモデルとして、デザイナーや建築家が各人で自分の住空間をセルフビルドによってつくりあげた。at-tableはセルフビルドの指揮 をとり、シェアの生活を管理するなど、コーディネーターとして機能している。向かいには8-studioというシェアオフィスがあり、オフィスとハウスが 一体的に使われてきた。8は八丁堀にちなんだもの。
左:改修前内観
右:棚の詳細図
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(C) daichi ano
《Floor and Walls Hacchobori》map-6
イデーアールプロジェクトの 監修のもとat-tableがデザ インを担当したオフィスビルのコンバージョン。1階のファサードを思いきって刷新し、いままでこの地域になかった活気を感じさせる。大きな開口が通りに対 して閉じがちな周囲の建物と対称的である。
上左:改修前内観
上右:リノベーション後外観
左:リノベーション後平面図拡大
上:5階
下:1階

左上:外観
右上:改修前内観
右下:リノベーション後平面図
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《TSUKIJI -00》
物件オーナーと共同出資で、空きオフィスビル4フロアをSOHO住居にコンバージョンしている。改修後のビ ルをマスターリース(一括賃貸)
★1し、それぞれのフロアをサブリース(転貸)している。各フロアはそれぞれ趣の異なる雰囲気でつくられた。築地場外市場のイメージが強いこの地区の市場移転にともなう 空洞化を見込み、「TUKIJI-X」シリーズの展開により都心居住のエリアとして地域再生を試みている。
★1──不動産会社などがビル・マンションのオーナーから物件を一括して借り上げる形式のリース契約のこと。この借り受けた建物の室をテナントへ転貸する ときの契約をサブリース契約と呼ぶ。
現況:2004年

リノベーション後内観

イヴェントの様子
《三福ビル》

リノベーション後内観

イヴェントの様子
《8−
FACTORY》

リノベーション後内観 (C) daichi ano

地下室でのイヴェントの様子 photo by mihotanaka
《Floor and
Walls Hacchobori》

リノベーション後内観

2F SUBLET イヴェント(英会話教室)
《TSUKIJI -00》
■「ベルリンのタヘレス★2のようなアンダーグラウンド・カルチャーに活発な空気を感じ、自分たちの手でつくりあげること に実感をもっていた」とドイツ留学など海外経験の長い岩本氏(at-table)が語るように、八丁堀を中心としたリノベーションによる地域再生の試み は、欧米で起こっているような、クリエイタ−が集まり地域を変化させている現状に重ねることができる。彼等はイデーアールプロジェクト株式会社の前身であ る任意団体[R-PROJECT]へ創立当初から参加し、セントラルイースト東京(CET)★3ではat-tableの改修物件がイベント会場として使用 され、地域再生に効果的に関与している。八丁堀や新川、新富町などには彼等の活動に共感した若いデザイナーがセルフビルドで空家を改修した物件も見ること ができる。
リノベーションの手立てとしてCNNというネットワークを活用していることは先述したが、CNNの活動を通して中央区をマクロ的に見渡してみた時、一番有 効活用されていないのが、都心の川辺の空間であると認識したという。現在at-tableでは中央区の観光による地域振興をめざし「川辺カフェ」というプ ロジェクトを区役所、区観光協会と協力して推進している。岩本氏はドイツで見たデュッセルドルフのライン川ような絵になる空間を実現したいという。


★2──ベルリンの壁の崩壊後に、旧東ドイツ側に残る廃虚をアーティストがスクワット(不法占拠)し、自由奔放な空気のもと彼等の創作のためのアトリエ群 が形成された。アンダーグラウンド・カルチャーの中心となり、廃虚のイメージがアーティストたちによって刷新された、として注目されている。
★3──本アーカイブス、[022]Open A Ltd、馬場正尊[025]松葉力+田島則行+テレデザイン、参照。
(吉岡 誠生)
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