Renovation Archives [011]
ファロ・デザイン[藤枝隆介]
●シェアオフィス[雑居ビル] エチソウ

概要/SUMMARY



写真左=スケルトンになった状態

写真右=コンバージョン後

設計概要
用途=1〜4階 1階店鋪、2階店鋪、シェアオフィス、3階シェアオフィス、4階事務所
構造規模=階数 地上4階建て
主体構造 鉄筋コンクリート造
面積規模=延床面積約270坪(1階床面積=約90坪、2階同=約90坪、3階同=約70坪、4階同=約20坪。2階リノベーション面積=10坪、3階同=55坪)
建築年月日=1924年
リノベーション年月日=1997年5月〜2004年8月(2002年9〜12月頃 外壁耐震補修)
企画・設計=クアトロプントス株式会社(グラフィックデザイン)+ファロ・デザイン有限会社

関東大震災直後に建てられた築80年のRC造雑居ビルの転用である。
4階建てのビルの3階と2階の半分がクリエイティヴな業界の事務所が集まるシェアオフィスとして使われている。映画のフィルム保管庫として使われた後、閉鎖されていた3Fのスペースにグラフィック・デザインの事務所が入ったのが5年前のことである。その後、不動産の紹介ではなく友人のつてだけで4社の事務所の他、数名の個人事業主がシェアするオフィス・スペースとなった。
シェアメンバーによってリノベーションされた3階のスペースは、白く塗られた壁面、デザインされた家具、デスクにPCが並ぶ、といったインテリアが、1、2階の居酒屋、雀荘などの雑居テナントと好対照をなす。3階中央に位置するプライベート・バーがシェアメンバー間の交流の場であり、来客時の応接スペースとなっている。シェアメンバーで設計事務所のファロ・デザインは自らのオフィス・スペースの改修と新規メンバーのスペースの改修を手がけている。シェアオフィス入居当初は個人で設計活動をしていた彼等だが、シェアをきっかけに共同で事務所を立ち上げた。「普段からリニューアルの仕事をしているが、30年もののリニューアルなどとは訳が違って、80年となるとそのままでは到底使えないものを、使えるものにしているという実感がある」(ファロ・デザイン/藤枝隆介氏)。2年前にはビル自体にハンマーによる圧縮強度の推定といった耐震診断と耐震補修として耐力の向上のために外壁へエポキシ樹脂の注入がなされている。本郷通りに面した個性的な外観も魅力のひとつ。
現在のシェアメンバーはグラフィック・デザイン事務所、コピーライター事務所、JAVAプログラミング事務所、建築設計事務所。

施工プロセス/PROCESS

工事費はセルフビルドのため、材料費のみ


間仕切や本棚はLSLでローコスト化。スペースによってLSLの質感をそのまま出している室と、LSLの上、OP塗装している室がある
竣工/COMPLETION
個性的な外観。震災後に多く縦たれた看板建築のようでもあるが、れっきとしたRC造。
もとは3階建てであったが、4階が後に増築され、外観からはシェアオフィスであることはわからない。

居住者が店舗やアトリエとして利用するスペースに。従って内装はほぼ元のまま。
3階プライベート・バー
オフィス・スペースで囲まれた中央部に位置するバー。シェアメンバーの間の交流の場となっている。来客時のミーティング・スペースとしても使われている。パーティやライヴが行なわれることもあり、100人以上が集まったこともある
左:3階ミーティング・スペース
右:3階。5年前に最初に入居したシェアメンバー、グラフィックデザイン事務所のオフィス・スペース

←ファロ・デザイン3階のオフィス・スペース。パーティションはLSIでつくられている
←ファロ・デザイン2階のオフィス・スペース。
パーティションはLSIはOP拭き取り。
床はカーペットだったものを張り替えている
←JAVAプログラミング事務所のスペース
新規メンバーのためのスペースで、ファロ・デザインによる改修。ロッククライミングを模したインテリアはメンバーの希望によるもの
■コメント
1、2階の居酒屋や雀荘を抜けて、階段の突き当たりの扉を開けるとまったく別の空間だった。3階のシェアオフィスはまさにクリエイタ−といった面々が机を並べるオフィス・スペースへ改修されていた。最初に通されたプライベート・バーとミーティングスペースは、職場の環境にこだわるクリエイタ−ならではの発想。各シェアスペースともに築80年という古さに落ち着きと包容力を感じた。(吉岡誠生)
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