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FORUM No.04(2006.12.7)

遠藤和義
工務店ビジネスとホームセンター型建材流通の可能性

SESSION05

住宅をつくる技術のサイクルと持続性

松村──だけれどこの業界を応援しようと思っている政治家たちは、セカンドハウスが豊かさの象徴だから日本も住宅はみな2戸もたなくてはいけないと言っている。その方向で動いたりするとセカンドハウスを田舎でつくるかもしれない。
少し話は変わりますが、この間超高層マンションの現場に行ってきたのですが、2棟建っていて、1棟1200戸で、2棟で2500世帯くらいです。何か決める場合は2500人が決議しなくてはいけないので、大規模修繕など何にもできない。ああいうのはどうするのだろうと思います。

山本──大規模修繕できないで困っているマンションはいくらでもあり、もっと小規模でもあります。今はつくれば売れるからどんどんつくっていますけれど、簡単に壊すわけにはいかず、やがて不良債権になるかもしれない建物を大量に住宅として供給しているわけです。

遠藤──ものとして長期間もっても、人間の寿命のほうが短いので、それに対処できないわけです。200年後に次の住宅を誰がつくるのか。今の木造住宅はまさにそうで、木造住宅はあと20年後ぐらいには伝統的な方法で増築したり改築したり建て直したりすることはもう不可能です。

松村──20年に1回ずつ建て替える伊勢神宮方式がよいかもしれない。20年に1回というのは技能をジェネレーションで伝えていく重要なタイミングです。つくった技能はそれで途絶えないわけです。

遠藤──そういうことによって技術革新を柔軟に取り入れていく。200年も経つと200年前の技術でその間進歩しないことになるので、何かを改善しようとなると少しだけしかいじれない。ストックの管理でそれをしていくことにこれから切り替えないといけないので、産業や技術開発の方法が変わります。

山本──短いサイクルで建て替えるという場合も、技術を保つということも、根本的には木造が前提だと思います。100年、200年ももつ建物というのは環境問題とも関係しているとは思いますが、リサイクルのことを考えると鉄骨やコンクリートはかなり大変です。そういう意味では環境負荷の少ない木造で、短いサイクルでつくり続けることの持続性は、理論としては想定できると思います。ただ技術的にはなかなか難しいとも思いますが。

松村──環境問題で言えば、日本が国産材を使って住宅を建てるのだったら、山のサイクルと住宅の寿命を合わすとよいとは言えます。だけれど実際は木材市場はグローバルなものだから、日本の国土保全のために木造住宅を建てるというダイレクトな関係性はもはやない。だから木造住宅を建てて、酸素を固定して決して燃やさない。腐るとまた酸素出てくるので難しいのですが。

山本──逆に森林は使わないと酸素の吸収力はなくなってしまうと言われていますが……。

松村──僕はその点が疑問で、本当にそうなのかと誰かに聞いてみたい。木を切り出さないと山が荒れるけれど、長期的に見たら雑木林になるのではないか。杉だけになっている山がありますが、最終的にどうなるのかと思います。

山本──まだそこまでのサイクルを見ていないのでわかりませんが、木の寿命もありますから、それとのバランスになってくると思います。

松村──工務店が死に絶えたら木造はもうできなくなる。プレカット工場がつくったりするかもしれないし、最後はツーバイフォーになるシナリオもあるかもしれない。ツーバイフォーだったらジョイフル本田でつくってくれるわけです。

質疑応答

会場A──ホームセンターでプレカットなどをやっている状況で、ホームセンターが住宅メーカー化することはないのでしょうか?

遠藤──ホームセンターがパネル加工しているのは、そういうことだと思います。結局ある程度のロットがあったときにはそうなります。そういうかたちでホームセンターが建材一式を工務店に供給する、なおかつ現場に配送します、また与信管理もやり、10年保証をやることになれば、ここを中核として住宅メーカーの機能を持つことはありえるのではないでしょうか。すでに始まっていると思います。

松村──リフォームはやっています。ホームセンターのリフォーム相談コーナーに行くと図面を書く人がいて、CADで設計してくれて、そこで売っている建材で見積もってくれる。それで工事までやってくれます。

山本──ホームセンターで工事をやるということは、そこで建材を売っていて値段はわかっているわけですから、見積もりに関しては透明性がかなり上がると思います。そういうことを考えても、工務店さんは少なくとも見積もりをもう少しわかりやすくしてほしいと思います。

松村──こんなに分析しないとわからないというのがおかしい(笑)。しかも工事台帳や実行予算書もとても手に入れられない書類でしょ。

山本──人が利益を得て商売やっているのは当たり前で、変なごまかし方はしないでもよいと思うのですけれど。

遠藤──本当は2500万円で住宅を建てる人は、これからもビジネスが続けられて、何かあったときには棟梁に家を直してもらって、地域のインフラとして25パーセント、500万円ぐらい払うと考えたらよいと思います。そうでない限りは、安全で少し文化的な暮らしをすることはできない、そのためのデポジットだと思わなくてはいけない。つまり設計者にもお金を出して、それを値引きの対象にしてしまうのでは困ると思います。

松村──そういう工務店像が消えてしまうと、工務店になる人や下請け工務店になる人すらいなくなってしまう。上がりの形があるからハッピーであって、オレは工務店の社長になって儲けるという気持ちがあるから下請け工務店でも我慢してやるし、大工になろうという人も出てくるわけです。だから工務店がなくなるとそれになろうとする人たちが誰もいなくなって、住宅メーカーもゼネコンも立ちいかなくるし、職人もいなくなる。引きも切らず若い建築学科の学生は労働条件悪くても設計事務所に行くわけです。だから工務店も「工務店は儲かっているぜ」「儲けてどこが悪いんですか」というようになってほしい(笑)。

遠藤──そういうブランディングは必要だと思います。それがないとどんどんコストダウン、コストダウンとなって自分の首を絞めてつまらないビジネスにいってしまう。車でも中身はあまり変わらないのにブランドで1.5倍や2倍のお金を払う客がいるわけです。住宅も少しそういう要素を持ったビジネスにしたい。

山本──でも、そういうブランド戦略などを考えると、ホームセンターあたりが先に確立してしまうのではないかという恐れがあります。無印良品がやっていることはそれに似ているのかもしれないですけれど。

遠藤──大工・工務店のブランドは地域社会への貢献です。町棟梁を大事にする。あの棟梁に建ててもらいたい。そういうブランディングもあると思います。

松井──棟梁は職業のブランドとしては魅力的ではないのですか?

遠藤──かつては非常に尊敬されて、建て前や上棟式の時に棟梁おくりという儀礼があったほどです。鳶が木遣りをうたって、棟梁の花道をつくって棟梁宅まで送って感謝する。そういうものだったはずです。

松村──棟梁を先頭にして下職をみな引き連れて町の中を大名行列みたいに行列で歩く。それは誇らしいものだったみたいです。だから昔の棟梁の息子さんが書いた文章を見たのですが、その人自身は80歳くらいなんですけれど、親父が棟梁と呼ばれながら帰ってくるのを見て本当に誇らしかったと書いていました。

会場B──大変貴重なデータをありがとうございました。われわれがこういうのを見たいと思っていたデータでした。そのなかで、建築設備メーカーとしては、1億買っていただけるところは年間1000万買っていただけるところより掛け率は大幅に低い。そうなると、2、3人の棟梁大工さんは価格競争力だけでは完全に勝てないわけです。

松村──小さいところは、価格で勝負する市場ではもう駄目です。だから先ほど言ったような、この人にしかできないという独自性があって価格が高いということだと思います。最終的には数奇屋、入母屋の部分をつくって渡してしまうこともありえるかもしれない。そういう場合、便器やサッシに何が使われているかはほとんど興味がないです。

遠藤──2、3棟やっている棟梁も年間何百棟つくっているところも、結局住宅のプライス自体には大きな差はなくて、コストダウンできた分がその会社の販管費に回るわけです。2、3棟のところは大手とは違うところで一般管理費を捻出しているので、ビジネスモデルが全然違うと思います。

松村──この市場はどこもあまりおいしい思いをしていないから決着がつかないのでしょう。ずっと工務店が6割ぐらいシェアをもってて、大手はプレハブ化率は17パーセントでもう上がらないし、もう上げようがない。その理由はたぶん決定的なものがないからです。職人も同じで同じ建材を使っているからたいした差は出てこない。遠藤さんがおっしゃったように便器が安くなった分、テレビコマーシャルになって電通にお金が入る。

遠藤──工務店でも調達努力で安く材料を買って、どれだけ利幅を稼ぐかは最後のぎりぎりのところまでやっています。例えば工程の最後のほうになる壁紙なんかは、安く材料のとれるメーカーのカタログしか持っていかない。小さな工務店でもそういうことをやっています。なるべく安い価格で材料を買いたいとは思っている。まあ規模によって限界はありますが。

会場C──ホームセンターさんがプロユースの取り込みやリフォーム事業をやっているということですが、今後どういう風に動いていくか、その辺の見込みをお聞きしたい。まずプロユースの取り込みですが、これからどう伸びていくのか。ホームセンターさんは具体的にどういう職種の方が買っているというのが見えないので、「なんちゃってプロ」などという言い方をしているのですけれど、タイル屋さんがタイルを買っているのでなくて、水道工事屋さんがちょっとタイルを貼らないといけないからタイルを買う、そんな感じの買い方で、タイル屋さんはまだメーカーから買っているという仮説を立てています。最終的には本業の人も買っていくかたちになると、ハウジングプロデュースが根付いていくと思うのですけれども、そこら辺の可能性をどう分析していらっしゃるのかをお聞きしたいのですが。

遠藤──物流と商流が一致していて、お店の物をプロが買っていくという形からはすでに少し離れてきています。最初に言ったように建材を大量に何百万も買うような人ではなくて、材料を少し買ってリフォームするような、それも半分職人さんみたいな人が買う時に使っている。プロユースといっても、一棟分の材料を買うというのとは違う。そちらはINAXの別のチャネルでがっちりつかまえているはずです。

会場C──そういう本業の人がそこで買うというところまでは至っていないというご判断でしょうか。

遠藤──ただ客が自分で建材を選びたいという場合があります。工務店がホームセンターにお客さんと一緒に来ているということもありますので、そういう機能は果たしているとは思います。田舎に行くとINAXさんもTOTOさんもショールームがない。そうなると大工さんがお客さんをショールーム代わりにホームセンターに連れていくことはあります。それでかなり受注できていると言う大工もいました。そういう使い方の可能性はあるのではないですか。

会場C──もうひとつリフォーム事業です。ホームセンターはどちらかというと安かろう悪かろうというイメージも残っているような気もするのです。その中でこれから本当にリフォームを受けるとして、他のいろいろな工務店さんやリフォーム屋さんと対抗して伸びていくためには、どういうことが必要だと思いますか。

遠藤──リフォーム詐欺以降──あれはリフォームやっていた人が詐欺師になったのではなくて、詐欺師がリフォーム業界に来たわけですけれども──、業界の信頼性が非常に下がったわけです。それに対して、ホームセンターのように大きなお店を構えて、価格が明確で保証もしてくれるという安心感はお客さんの気持ちを掴んでいると思います。施工部隊は地域の工務店や専門工事業者を組織化してやっているところも出てきています。これまでリフォーム市場は、元施工の工務店に頼むのが一般的だったわけですが、工務店の実態はすでにお話ししたとおりですから、これからはホームセンターにそれが移る可能性もあるのではないという気がします。

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