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FORUM No.04(2006.12.7)

遠藤和義
工務店ビジネスとホームセンター型建材流通の可能性

SESSION01

建築工事費と諸経費の概念

松井剛──前半に調査のお話がありましたが、相当ご苦労されたと感じました。素人の質問で恐縮ですが、これから僕も家を買うかもしれないのでお聞きしたいと思います。僕が家を買うとき、工事台帳を見せろと言ったら見せてくれるのですか。

松井剛氏


遠藤和義──工事台帳は大工・工務店内部の文書ですから、基本的には見せろと言われて見せる義務はありません。見る権利もない。よいお施主さんはお金は出すけれど口は出さない(笑)。内訳は見ない、つまり完成品をプライスで買うというのがいわゆる請負契約です。つくる過程や使った材料は一応決めてはいますが、実費精算的にコストは把握できない。建設業のビジネス自体はそういうものですから今日紹介したようなデータは、たぶん当事者以外は誰も見たことがないと思います。

松井──諸経費を見かけ上少なくすることは昔からそうだったのか、それとも何かのタイミングでそうなってきて今まで続いてきたのか、どちらなのですか。

遠藤──諸経費という概念自体はもともとありませんでした。大工さんは一般管理費で生活しているのではなくて、直接工事費の中の大工工事で、毎日身体を動かす仕事によって収入を得ていたというのが工務店のオリジナルの形だと思います。

松村秀一──細川護熙首相の頃、日本の住宅は高いということで、まったく同じ図面でアメリカと日本で見積りをとって、内訳を比べる作業をやったことがあります。アメリカの場合は、諸経費はコースが決まっていて、ビルダーによるとは思いますけれど、僕らの頼んだビルダーは15パーセント、20パーセント、25パーセントコースがあり、それぞれサービスが違う。でも諸経費は最低でも15パーセントからちゃんととっていました。それは、今の遠藤さんの話を聞くと、元々の成り立ちが違うからだと思います。工事費に自分の実労働に対する対価が含まれていた大工から、徐々に経営にシフトして、結局ゼロではないのにゼロのようなかたちで出さざるをえない業態として成立してきたんでしょう。ゼネコンもみなそうです。

遠藤──一般管理費は、ゼネコンが見積もるときも、人が何人動いてどのくらいかかるというのではなくて、工事費に対する割合で計算しています。

松村──住宅メーカーも同じ構造で、住宅の値段の根拠を住宅メーカーの中で分析しようとしたら、例えば工場が本当にいくらで出しているのか、社内の工場なのに社内ではわからない。お客さんにはこういう提示をしているけれど、切るフェーズによって全部コストが違っていて本当はいくらなのかはわからないという不思議な業界です。

山本想太郎──諸経費というのは非常にわかりにくい概念です。建築家は、それを査定するという立場にあるわけですけれど、例えば大工工事費に大工さんの利益が入っていて、さらに諸経費が全体の工事費に対してかかっていると、これは二重取りではないかとも思えます。つまり利益に対してさらに利益率をかけているのではないかとも見えてしまう仕組みですね。査定するときにそういう部分も減額交渉項目となります。下請け構造というのがあるからそうなってしまうのですけれど、サブコンがいて、設備工事やほかの工事費の見積りが元請けに出てくる。総額の直接工事費に対して諸経費がかかってくるということは、サブコンの利益に対しても利益を上乗せするという構造です。それまで含んだのが諸経費というものです。

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