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FORUM No.02 (2006.8.28)

望月久美子
「住生活1000人調査 2006」──住宅像の現在

LECTURE01

「住生活1000人調査」に見る住宅像

司会──本日は東急住生活研究所の望月久美子先生にレクチャーをお願いいたします。お話は、首都圏の25歳以上の男女のうち、5年以内に住宅計画を持っている1000人を対象に、東急住生活研究所が実施した「住生活1000人調査」の調査結果を元に住宅志向性やライフスタイルの分析、50代の男女のライフスタイルに合わせた住環境の変化、また団塊の世代の退職をふまえた市場での可能性などについてです。

望月──私ども住生活研究所は過去20年間、毎年1回「サラリーマン住意識調査」を行なってきましたが、男性サラリーマンが対象でした。しかし男性がメインターゲットであるという時代が過ぎ去っている現状に対して、その調査自体が金属疲労を起こしていると考え、調査のベーシックな枠組みを思い切って変えてみようとしました。そして2006年3月に、対象を見直し「住生活1000人調査」として再スタートしました。調査のポイント、概要は表のとおりです[fig.1-01、02]。調査の対象は首都圏に在住する25歳以上の男女で、3万人をベースにスクリーニングし、5年以内に何らかの住宅計画のある1000人としました。対象調査手法もインターネット調査で情報を集めました。

望月久美子氏

fig.1-01[拡大] fig.1-02[拡大]


内容の一部を紹介したいと思います。まず住宅計画が具体的にどのような計画、志向で考えられているかを見ていきたいと思います。まず回答者のプロフィールは平均年齢は43.2歳で、ライフステージとしてはシングルとカップルが約半分、ファミリー家族、つまり子供がいる家族が約半分という構成になっています。該当者の持家率は39%で、これは全体の平均からすると10%ほど低い。というのは、もともと住宅計画がある人が対象なので、その辺が影響していると思われます。当然ながら年齢と共に持家率が上がってきます。持ち家の人のローン返済金や税金と賃貸の人の賃料を比べてみるとそれぞれ年額平均92万ぐらいになります。つまり住居費としてかけていく費用は持家であろうと賃貸であろうと92万円位なのだと思います。昨今流行の上・中・下意識についても聞いたのですが、シングル系で下流意識という認識が他よりも多いのが特徴で、その影響もあって賃貸住宅に住んでいる人のほうがやや意識としては低めです。
住宅計画保有率を最初のスクリーニングの調査から見ると、計画が5年以内に何もないという方が64%で、借りる、あるいは購入する、リフォームするといった何らかの計画を持っている方が約35.6%です[fig.3・上図]。年齢別に計画の内容を調べた結果がありますが[fig.3・中図]、年齢によって借りるのが中心、買うのが中心、リフォームが中心と棲み分けがされています。借りるところは20代後半がピークになって、35歳以降になると減っていきます。それに対して購入になると35歳くらいがピークになって、そこから40代前半までが購入の中心になっています。そして年齢が上がっていくとともに賃貸と購入は減り、反対にリフォーム関連がアップし、50代になると2桁台で増加傾向になり、中心がはっきりと変わっています。購入する場合のマンションか戸建てかという点についてですが、ほぼマンションと戸建てともに拮抗しています。純粋にマンションを購入を希望している方は44%、一戸建ては、土地があってそこに建てるという方を合わせると54%でやや多いのですが、実際はほぼ拮抗していると見てよいと思います。購入計画で年齢別に差があるのかというところを見たのがこの図[fig.3・下図]で、特徴的なのはマンションを希望するのは20代後半で、30代前半はむしろ一戸建てのほうが優勢です。いわゆる団塊ジュニア世代の戸建て志向が言われていますけれど、ここでもそういうことが検証されたと思います。ただ年齢によって大きな差があるとはどうも言えないという感じがします。

fig.1-03[拡大]


次はそれぞれの予算についてですが、マンション、戸建て、土地を買って建物を建てる場合、それぞれの予算、それから限度額について聞きました。その結果、マンション購入と戸建て購入──これはほぼ建て売り購入とみていいんですが──はほとんど価格の差がありませんでした。戸建てだから高い、マンションだから少し安いという感覚ではないと思います。それに対して土地と建物を買う場合、金額は図抜けて高くなっていて、マンションや戸建て購入層とはまったく層が違うと思います。余談ですけれども、予算と限度額の差はだいたい800万円ぐらいで、営業的にはこのあたりにどのようにアプローチするのか考えるべきところだと思います。結論として、マンション購入、戸建て購入には金額的な差がなく、土地を買って建物を建てる人たちは少し特殊な層だと言えると思います。
次に借りる場合も含め、どのくらいの面積を希望しているかを、借りる場合、マンションを買う場合、戸建てを買う場合の3つに分けて聞きました。非常に差がはっきり出て、借りる場合は20平米から30平米あたりがトップになります。賃貸を希望しているのがだいたい20代前半ということを考えると、広くても大体70平米未満に集中しているのが賃貸希望者の分布です、それに対してマンション購入の場合はだいたい70平米から90平米未満がピークで、賃貸の居住希望者とマンションの居住希望者とはこれだけ差があるということです。さらに戸建ての希望者はもう少し広くなって90平米から100平米にピークがあります。建物を所有するか、借りるかで希望もうまく振り分けられているとも言えますが、逆に言えば供給側の事情がそのまま反映されていると思います。
居住費に関連するのですが、借りる人が希望する1カ月の家賃の予算と限度額を聞いてみました。予算では10万円台が一番ピークになり、おそらくワンルーム系だと7〜8万円台で、限度額は15万円までです。ここから上、特に20万円以上の高額のマーケットはわずかで6%ぐらいが現状だと思います。最近、賃貸住宅市場、特に不動産の証券化市場でファンドやリートが出てきて、賃貸住宅が収益不動産ということで注目されていますが、主にファンドが狙っている賃貸市場はこのわずかな高額なマーケットです。現状としてはここでの市場拡大が難しいので、賃貸の裾野を拡大することになれば、どうしても10万円から15万円くらいのところでファミリー向けの商品が提供できるかによって賃貸住宅市場が広がるかどうかが決まってくると思います。そういう意味では賃貸住宅市場はまだまだ裾野は狭いと思います。

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